第10話 急な告白
合同授業が終わり、ユウナは学園にある食堂で昼食をとっていた。
食堂といえども、貴族が通う学校の食堂はもはや、王宮並みの広さを誇っていた。
煌びやかなシャンデリア、豪華な料理がたくさん並べられる長机に何人も座れる椅子、まさに貴族様様である。
ユウナはそんなところでも他の生徒と距離を取るように一人で長すぎる机に座っていた。
「あの、ユウナ様。こちらの席は空いておりますでしょうか?」
一人でいるユウナに近づく二人の女子生徒がいた。
その生徒は入学して間もない時にユウナに声をかけてきた二人の生徒だった。
二人は少し申し訳なさそうな顔をしていた。
そんな二人を見かねたユウナは笑顔を向ける。
「うん、いいよ。少し寂しかったの」
ユウナにそう言われると女子生徒はにこやかな笑顔になり、ユウナの近くに座って、一緒に食事をとり始める。
ウキウキしながら昼食を食べ始める二人を見ながらユウナは朗らかな気持ちになった。
「そういえば、ユウナ様。あの事件の解決を学園長から任されたと聞きましたが、本当なのですか?」
「ゔっ…! ごほっ、ごほっ!」
唐突に聞かれてユウナはびっくりしてしまい、飲んでいた紅茶を吹き出し、咳き込んでしまった。
「ユウナ様、大丈夫ですか!」
「う、うん、大丈夫大丈夫…」
もうそんなに噂が広まっていたのかとユウナはお嬢様の情報網は侮れないと思った。
「ま、まあね。ほんと、学園長も酷いもんだよね……」
あははと笑いながら、溢れた紅茶を拭いていた。
「ほんと、学園長も酷いもんだよな」
その時、ユウナたちの会話に入ってきた男子生徒がいた。
会話に入ってきた生徒は見た目は根暗のような感じで顔面蒼白で目つきも寝不足のせいか悪く見える。
睨みつける彼の目は嫉妬とか、そのほかの感情があるように思えるがユウナはそれどころではなく、今は。
「あの、どなたでしょうか?」
「なっ!? マルクスだ、マルクス! お前と同じ騎士科の生徒だ!」
そもそも、その人物が誰なのか、ユウナは認識すらしてなかったようだ。
睨みつけていた彼の目は驚きの目に変わったかと思うと、今度は恥ずかしさで睨みつけるが、ため息をついて、ユウナを真剣な表情へと戻った。
「まあ、いい。それよりもお前に事件の解決など、到底無理な話だ。女が事件を解決なんてあり得ないだろ」
マルクスは見下したように嫌味まじりで言う。
完全に嫉妬というか、八つ当たりに思えてくる。
ユウナはマルクスに対して嫌悪感を抱くことに時間は掛からなかった。
「だけど、私は学園長の命なので行っているだけです。もし意見があるのであれば学園長へお願いします」
「何? なんだ、自分が優位に立っているつもりか? 公爵家とはそんなに偉いのか? いいご身分なことだ」
マルクスはユウナがよほど気に入らないのか、横暴で荒っぽい口調で攻撃してくる。
ユウナは立ち上がり、マルクスと正面に向き合う。
「そうではありません。身分や家柄ではなく、私自身の意見です」
「それが気に食わないと言ってんだ! お前ら公爵家や身分の高い連中はいつも身分の低い俺らを馬鹿にして、見下してやがって!」
「私はそんなことをしたつもりはありません」
二人の会話は途端に白熱して、互いに声が大きくなっていく。
食堂にいる周りの生徒もユウナたちの方に注目している。
「たかが公爵家に生まれたからって、でかい顔をしやがって、そういうのが不愉快なんだよ、女は黙って、家で紅茶で啜ってろ!」
マルクスの言葉にユウナは押し殺していた怒りの感情が溢れてきた。
それは自を馬鹿にされたわけではなく、自分の家系や他の公爵家を無下に罵倒されたからだ。
言葉の暴力に怒りに体を震わせて、ユウナは手を振り上げてマルクスの頬を叩こうとしたその時だった。
「なんだ、最近よく見る痴話喧嘩か? 仲良いのか?」
今の場の雰囲気に合わないひょうきんな口調と言葉選びのチョイスで二人の間にわっったはいったのは服部だった。
「誰だよ、テメェ? 入ってくんじゃねぇよ」
「いや、そう言われても俺はアリエスタに用があるんだよ。だからお前がどけ」
「いきなり出てきて、なんなんだ、テメェ! 喧嘩売ってんのか!」
服部にも噛み付くマルクスだったが、そんな彼に服部は臆せず、堂々としている。
「喧嘩? もしお前に売ったとして俺に得はあるのか? そんな暇ないから。とっとと失せろ。それとも……」
言葉を続ける服部は机に置いてあったナイフを手に取ると、ナイフの先端を見続ける。
「それともなんだよ? さっさと言えよ。イラつく………、ヒッ!」
マルクスの言葉を聞いた服部はニヤリと笑ったと思ったら、次の瞬間にはマルクスの喉元にナイフの先端を向けていた。
ユウナたちも含め、その場の全員が恐怖に包まれていた。
マルクスに至っては喉元にナイフを向けられてるため、顔が引き攣り、呼吸もままならない。
そんなマルクスに向かって服部はこう宣告する。
「イキがるのもいいが、相手を選べよ。俺はそこらの人間とは違うからな。でないと、うっかり切っちゃうよ」
不敵な笑みを浮かべながら、ナイフを向ける服部の神経にユウナは心の底でとてつもない恐怖を感じた。
「う、うるせぇ! お、おお、覚えてろ!」
マルクスは何度も聞いた捨てセリフを吐いて逃亡していった。
「……逃げた」
服部はどこかがっかりした様子で持っていたナイフを机の上に投げ捨てる。
「それで、なんの用なの?」
「ああ、そうだった」
ユウナが改めて聞くと、服部はユウナのほうを向き直るとこう言った。
「俺と付き合ってくれ」
「え?」
その時、ユウナの頭の中の思考が止まったことは言うまでもない。
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