第7話 初動捜査
「これはつまり、この国の連続で起こっている、不可解な事件と繋がりがある」
服部に言われつまで全貌が見えなかった不可解な事件、いまだに国の捜査では糸口もはっきり掴めておらず、捜査が難航しているにも関わらず、彼は今回の腐敗死体でこの短時間で手がかりを掴んでいた。
アイシャから依頼された腐敗死体の事件解決、これに向けてユウナと服部の二人で事件の捜査に乗り出すのであった。
翌日、ユウナは学園の教室のクラスで机の上に肘をかけて、窓越しに朝の青空を眺めていた。
眺めながらユウナは服部からあることを言われていたことを思い返していた。
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それは昨日の学園長の話を終えてから、学園の書物部屋、本がたくさん並んである部屋にやってきていた。
「ねぇ、なんで書物に来たの?」
「そんなの調べ物をするために来たに決まってんだろ」
ユウナの質問を答えながら、服部は書物部屋に並んでいる棚を歩き見ている。
一体何を調べるためにここに来たのか、ユウナはわからないまま、服部のあとをついていく。
「調べるって、一体何を…。いたっ! って、どうしたの?」
そう思ったときに服部が急に立ち止まり、ユウナは反応できずにそのまま服部の背中にぶつかってしまった。
「あの本はなんなんだ?」
「えっと、どれ?」
服部が指差す方向を見て、ユウナは本棚を見るとその方向には魔法に関する本棚を指差していた。
「ああ、魔法のことが書かれている本だね」
「魔法、か…」
服部は下をうつむき、考えこんでいたが少し読んでみようと顔を上げると。
「じゃあ、あの本を」
「はい」
「え……」
服部がしばらく考え込んでいる間にいつの間にかユウナが一冊の本を手に取っていた。
「これが欲しかったのでしょ? あれ、もしかして違った?」
「いや、別に」
服部は少し驚いていたがすぐに真顔に戻った。
当然、ユウナはその反応に疑問に思った。
そのあと、いくつかの本を手に取り、椅子に座ってページをめくり読み漁っていた。
ユウナは本を一枚一枚めくりながら、本越しに向かいに座っている服部を見る。
服部はパラパラと本のページを捲り、捲る手を止めてはそのページをじっくりと読み込んでいる。
「なんか言いたげだな、なんか気になることでもあるのか?」
「い、いや別に。ただ、何を調べているのかなって」
突然、服部がこちらに気づいて聞かれたユウナは少し恐る恐る聞いてみる。
聞きづらそうにしていたのは服部に変な質問をした時にバカにされたらだ。
「あの腐敗死体に使われた術を調べているんだ」
「術?」
「ああ。人をあの短時間で腐敗にさせることや部分的に腐敗させるには何かしらの術なりがあるに違いないと思ってな」
「そうなんだ……」
服部が普通に調べていることについて語った。
ユウナはなぜか気が抜けてしまっていた、というのも服部に以前質問したときにバカにされたことがあり、またされると思っていたからだ。
「だから、その原因を調べるためにここへきたんだ」
「それで何か、わかったの?」
「そうだな。とりあえず分かったのは魔術とか、呪術とかの類いじゃねぇってことだ。奴は自分の能力で相手を腐敗させることができる」
「…ということは、犯人は怪能力者の持ち主ってこと!?」
「怪能力?」
怪能力、それはこの世界で最も恐れられている能力の一つでこの世界から、神から愛されることなく、見放された能力者たちのことを指す。
例としてあげるなら、怪能力は見た目や容姿には反映されておらず、どこにでもいる人のように見えるが、ある条件を満たせばどんな場所、時間関係なく、その能力を解放できるらしい。
その条件というのが、一つはターゲットとなる人物に殺意を持つこと、そして怪能力を保持する者が
能力の種類などは様々で身体の一部を変形させたり、異形な生物に変身したりなど多種多様である。
(…だけど、怪能力はごくごく一部の人間、ましてやそんな一般的な能力ではないはずなんだけど……)
ユウナは、怪能力者について疑問を抱いた。
「なるほど、怪能力か…。手応えがありそうだな」
服部は静かになにかをつぶやいたあと、よしっと言って勢いよく立ち上がる。
「なに、どうしたの?」
ユウナは何かあったのかと思い、尋ねる。
「いや、なんでもない。それよりも、お前はここにいていいのか? 見たところ、学生の制服だし。そもそも事件の捜査なんかやってる場合じゃないだろ」
「それはそうだけど、私も学園長に頼まれたんだから。それに、二人で解決しろっていう話でしょ」
服部にそう言われて、ユウナは立ち上がって反論した。
「そうか。なら、一つ頼んでもいいか?」
服部はこれは好都合という感じでユウナに頼み事をする。
「なに?」
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その時に服部はユウナに事件のことであることを頼んでいた。
(…まさか、私にこれまでの事件の資料を持ってこいなんて。結構、難しいよ…)
ユウナはため息をついて、これからのとこでげんなりした様子で机に突っ伏した。
「少し話できるか、ユウナ嬢?」
「はい、大丈夫です……、えっ」
後ろから声をかけられて起きて振り向くと、そこにいたのは王子のクラウスだった。
ユウナは驚きのあまり、その場で固まっていた。
昨日の出来事もあり、まさかクラウスから話かけられるとは思わなかったのだ。
「殿下、どうかされましたか?」
ユウナは椅子から立ち上がり、クラウスの真正面に立つ。
「ユウナ嬢、昨日のことで話が…」
「ああ、昨日の……」
真剣な目をしたクラウスにユウナはつい目をそらしてしまう。
別に後ろめたいからという理由ではなく、ただ単にクラウスの男性にしては綺麗な瞳で見つめられて恥ずかしさのせいである。
それに
「…昨日の、あの男は一体」
「ちょっと待ってください。何か、廊下のほうが騒がしいような気が…」
「え…?」
ユウナに話を遮られてクラウスも廊下のほうに耳をすましていると、遠くの方から地鳴りのようなものが聞こえてきたかと思うと、その音はだんだんとユウナたちの方に近づいてくるのが分かった。
そして、その地鳴りの正体はユウナとクラウスのいる教室まで来ると、ピタリと止んだと思いきや、その瞬間。
「おい、アリエスタ! すぐに資料をよこせ!」
勢いよく教室の扉を開き、傲慢な態度と強引な言い方で現れたのは、服部だった。
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