第5話 依頼
突然の事件発覚で学園は大騒ぎになり、ついでに唐突にどこからか現れて男、服部 鷹介にユウナはとりあえず、彼を人がすなそうな場所へと連れてきたがユウナは激しく後悔した。
それは王子であるクラウスの目の前から、別の男を他の場所へ連れてきたことから、ユウナはその後の説明をしなきゃいけないのと、周りの生徒を勘違いさせたことへの改めての説明をしなければならない。
やることはたんまりとたまっており、その作業に追われると思うと。
「胃が、重い…」
「つーか、ここへ連れてきてどうすんだよ?」
部外者の服部はそんなユウナとは裏腹に呑気にタバコに火をつけ、プカプカと吸っていた。
「あなたはなんでそんなマイペースなわけ?」
「そんなことよりも、俺はこれからどうなるんだ?」
「ああ、そうだったわね…」
一応、のちの対応はするとして、まずは彼のことをどうするかだ。
さっきは弟子ということで通したけど、もう一つ厄介なことが残っていた。
学園の中庭で見つかってしまったあの腐敗したいはおそらくだが学園側が早急に対応をするに違いない。
「まずはあなたに聞きたいことがあるの。あなたのその格好と特徴的な髪色と瞳の色、それはこの国では珍しい色だから、すぐにわかったわ。あなた、日本人でしょ?」
「ふーん、お前、何者だ?」
ユウナは彼の顔を真っ直ぐ見ながらそう告げると一瞬で服部の目の鋭さは増した。
その瞬間、ユウナの身体に悍ましいほどの寒気が襲ってくる。
それは彼の目から放たれる鋭く光る眼光、見る相手を震え上がらせるほどの恐怖を与え、誰も人を寄せつけず、誰も目を合わせたがらない、まさに『蛇に睨まれたカエル』とはこのことを言うのだろうか。
「それは…」
…ほんとに怖い、怖すぎて心臓が、脈が、めちゃくちゃ早くなっていく。
ユウナも流石に眼光の鋭さに耐えきれず、目を逸らしてしまいそうになるがそれはほんの数分で終わった。
「ま、いっか。特に否定する理由もないし、お前が誰だろうが俺には関係ないし」
彼は凄まじいほどの眼光から一変して、すぐに平凡な気の抜けた目に戻ったのだ。
「ああ、意外とあっさりしてるんだね…」
たった数分の恐怖に包まれた雰囲気があっさりと消えて、なんだか腰が抜けそうになる。
「そういえば、お前はなんで俺が日本人だって、わかったんだ?」
「ああ、それはね……」
ユウナはその理由を話そうとしたが、それはとある放送で遮られてしまう。
「ユウナ・ヴィスト・アリエスタ、それと部外者の黒髪男子! 今すぐ学園長室まで来い、以上!」
学園内に響き渡る放送でユウナとその部外者である彼がさっさと来い
とい感じで呼ばれた。
ユウナもその放送とその呼び出した声の主が誰であるか、そしておそらくその内容もわかってしまった。
彼はなんだかのんびりとしているが、この状況をちゃんと把握しているのだろうか。
###
ユウナは部外者の彼を連れて歩き、呼び出しを受けた学園長室へと向かっていた。
歩いている最中に他の生徒たちとすれ違う、そのたびに注がれる目線がとても気になる。
いや、それを引き起こしたのは他でもない彼女自身だが、けどそれは仕方なかったんだ。
生徒たちの視線を気にしながら、目的の部屋へと辿りついた。
なぜかはわからないが、他の教室に比べるとやたら豪華のような気がするのはきのせいだろうか。
目の前にある扉は何かと派手な装飾があり、この部屋にいる学園長の人柄とセンスを疑う。
「失礼します。ユウナ・ヴィスト・アリエスタと、その部外者です」
「ああ、入ってくれ」
扉を静かにノックして名前を告げると部屋の奥から部屋の主の声が聞こえた。
入ることを許可されたユウナは扉を開けるとその部屋の主がニヤリと笑って、ユウナたちを出迎えた。
「いや、今日はほんとに色々ありすぎて、この学園始まって以来の出来事すぎて、私も頭を抱えてしまうね」
その声の主はユウナたちを呼び出した本人で、このイギリスト王国魔法学園、女性の学園長だった。
「この度はお騒がせして申し訳ありません」
ユウナは深々と頭を下げて謝ると学園長はニコニコと笑って制した。
「いやいや、構わないよ。まあ、とりあえず座っておくれ。飲み物を出すよ」
学園長は椅子に座ったまま、片方の手を横に置いてあるポットに指を近づけると、ポットは一人でに浮くとちょうど人数分並んでいるティーカップに飲み物を注ぎ込んでいく。
注ぎこまれたカップたちはこれもまた、独りでに動き出すと私たちの前に綺麗に並べられたのだ。
「さあ、座っておくれ。色々と確認したいことがあるからね」
「では、失礼します」
座るように施されて静かに高級なソファに腰をかける。
ユウナは座ったところでふと彼に視線を向けると、なぜか動かず、呆然と立っているのに気がついた。
動かない彼に疑問を感じてユウナは彼の顔を見ると、その表情に疑問を感じたのだ。
彼の視線を辿っていくとその目線の先には学園長がいた。
「ねぇ、何してるの?」
「…いや、なんでもない」
尋ねると彼は自分がぼうっと立っていることに気がついて何事もなかったかのようにユウナの隣に座った。
ユウナはその行動を不思議で気になった。
二人が座るのを確認してから学園長は話し始めた。
「まずは自己紹介からしようか。私はこの学園の学園長をしている、アイシャだ。どうぞ宜しく。そちらの彼の名前を聞いていいかな?」
「服部 鷹介だ」
「ああ、よろしく」
お互いに挨拶を終えてから、今回の騒動について話し始めた。
「さて。今回、学園で発見された腐敗死体だが他の生徒たちには口外しないよう伝えてある」
アイシャから伝えられた対応策はこれだった。
「理由を聞いても、よろしいですか?」
ユウナが尋ねるとアイシャはスカートからスラリと伸びた綺麗な足を組み直して、その旨を説明する。
「理由も何も考えてみろ。
要するに貴族たちからのクレームに対応するのは嫌だから、黙っとけということらしい。
ユウナ自身もその理由については少し納得している。
この国の貴族たちに対してユウナも思うところはあるのだ。
幼少の頃に見た、貴族たちの嫌味、嫉妬、互いの蹴落とし合いなど醜い争いを何度も見てきたユウナにとって、この騒動が公になれば反応も容易に想像できる。
「そこでだ、君たちに頼みたいことがある」
「なんでしょうか?」
アイシャは飲み物を片手に、ユウナと服部を見ながら話す。
「君たち、二人にこの事件を解決してほしい」
「はい?」
ユウナはアイシャから出た、頼みごとに理解ができないでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます