美少女霊能探偵団〜義妹を庇い事故に遭った俺が憑依した小学生女児のママは義妹で、身に覚えないけどパパは俺らしくて、俺はまだ死んでおらず、なぜかTSして美少女になってしまったので、義妹から処女を守りたい〜
第3話 知らぬ間に出来ていた娘レイハちゃんの心を守りたい
第3話 知らぬ間に出来ていた娘レイハちゃんの心を守りたい
「ママとパパの出会いが十二歳から? 嘘なの……二人は赤ん坊のときからなの。いつも一緒にいて双子のように育ったはずなの。兄妹ではなく互いに異性と意識しつつ成長し、小学生のときは高度な推理力を持つママと霊能力を持つパパで霊能探偵団を結成して、ゴーストハントしてたの。そして中学生のときに血の繋がらない兄妹と知り、両親に隠れて交際をスタート。高校生になったときに大人の階段を昇ったの。そして十六歳のときにパパはママを悪霊から守るために死闘を演じて、意識不明に」
どこまで続く薄暗い空間。
レイハがやけに具体的な与太話を呟きながら打ちひしがれていた。
小学生女児のorzである。
魂だけの空間。
高校生の姿の士道は見るに見かねて声をかける。
「……レイハちゃん? 確認していいか」
「待つのパパ。今のレイハは己のレゾンデートルが揺らいでいるの。いっぱいいっぱいなの。だから少し待つの」
「お、おう」
先ほどまでの会話からレイハと呼ばれる少女が、士道と美空との子供であることは察することができた。
士道には全く身に覚えがないが。
血の繋がらなくても健全な兄妹だったので。
だが理屈っぽそうなレイハの物言いが士道には懐かしかった。
子供の頃の美空そっくりだ。
「安心するのパパ。レイハは適応能力と理解力に定評あるの。六歳のときには子づくりも理解したの」
「六歳で子づくりを理解?」
「パパの病室に泊まっていたレイハは夜中に起きたの。そして目撃したの。ママが寝ているパパを襲っているところを」
「夜中に襲っている!? ちょっと待てなにを見た」
ムクリと立ち上がったレイハは右手の親指と人差し指で輪っかを作り、左手の人差し指を何度も通す。
「生命のピストン運動なの」
「色々となにやらかしてんだあのバカ義妹が!? 俺襲われているし、子供に見られているし! あとお願いだからその手の動きはやめて!? 幼気な子供にされるときつい!」
「……レイハ知ってるの。子供は卵子と精子が結合し受精卵となるからできるの。そこに愛は必要ないの。……愛? そう愛が全てを救うの! 具体的にレイハを救うの!」
さっきまで闇に沈んでいたレイハの瞳に希望の光が宿り、両手をパタパタさせ始めた。
まるでペンギンみたいだ。
「どうしたんだ急に?」
「パパはママのことを愛しているの!?」
「お、俺は別に美空のことは――」
「――待つのパパ! 異性への好き嫌いは照れ隠しで反射的に答えてはいけないの。よく考えるの。その答えで運命が変わるの。具体的にレイハの将来が変わるの」
言葉通り反射的に答えようとして、ピシャリと制止された。
レイハが右手のひらを突き出して、遠い目で語り始める。
「子供は親を見て育つの。両親の仲がよくないと『私は望まれて生まれてきたんじゃないんだ』と歪むの。子供は愛に飢えている。愛情が大事なの。パパがママを愛しているわけじゃない。そんなことを聞かされたら子供はどうなると思うの?」
「それは……」
「レイハの心はズタズタなの。十歳にして打ちのめされるの。立ち直れなくなるの。愛の結晶じゃなかった。ショックなの。あとママがヤバい人になるの。そんな現実受け入れられないの。ママのパパに対する愛は重いの。もしもその愛が一方通行だったら、レイハの生きてきた十年が否定されてしまうの。存在の否定なの。だからよく考えるの。パパの答えがレイハを救うの。レイハは生まれてきてはいけなかったの?」
「あ……愛してる……俺は美空のことを愛している」
子供の圧に負けた。
身を挺してトラックから庇うぐらいだ。
士道が義妹として、家族としてだが、美空を大事に想っていたのは事実だ。
異性として好きだったかは別だが。
だが士道の答えは正解以外の何物でもなかった。
レイハが光り輝く笑顔を浮かべて士道の胸に飛び込んでくる。
「パパ! レイハはずっとパパと話してみたかったの。優しいパパでよかったの。ママのことを溺愛しているパパでよかったの」
「で、溺愛?」
「溺愛してないの?」
「……してる。溺愛してるぞ」
「パパ大好きなの」
高校生で意識が止まっている士道十六歳には、初対面の娘レイハ十歳を抱きしめることしかできなかった。
戸惑いながら。
胸に頭をグリグリされながら。
士道は娘レイハを認知することになった。
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