第30話 セーマ、離脱

 今回は視点変更が多いです。見にくい等ありましたら、ぜひ教えていただければ…

(それ以外のコメントも大歓迎)


 追記

1000PV達成しました!見てくださるおかげで投稿を続けられています。本当にありがとうございます!


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 *アイシャ視点*


 三機の攻撃を捌き続けていたアストレアにビームライフルが直撃する。


「セーマ!」


 思わず叫ぶが、冷静になってテンシュカに迫ってくるビームハルバードを回避する。


『どうした?バルホールの軍神。私では役不足か?集中が途切れているぞ』


 アイシャは敵アストレアのパイロットの発言に苛立ちを覚える。


(…この苛立ちも図星ゆえか。どうもセーマを気にしてしまうらしい。そして敵になったアストレアがここまで脅威とは。何度か攻撃を当てたが、どうもダメージを負っているようには思えん)


 テンシュカが手に持つ“快晴”をアストレアに向かって振り下ろすが、ビームハルバードに防がれる。


「……」


 テンシュカが“快晴”を持つ力を弱め、その瞬間に距離を詰めビームハルバードを足で弾く。敵アストレアはビームハルバードを離さなかったが、大きな隙ができた。


「これで仕舞いじゃ。死ね」


“快晴”を敵のパイロットがいるコクピットに向けて思い切り振る。が、何かに防がれる。


(これは…セーマがミカと戦った時の)


『すまないが、私はまだ死ぬわけにはいかないんだ』


 テンシュカが敵アストレアに至近距離でバズーカを放つ。衝撃で敵アストレアは後方に飛ばされるが、やはり機体にダメージはないようだ。


『容赦がない…だが、私にとって幸運だな』


「!」


 敵アストレアは身をひるがえすとアイシャと反対方向へと向かう。


(あやつが飛んだ方向にセーマが…まずい、一時的に四対一になる。今のセーマにそれは…)


 テンシュカは遠ざかる敵アストレアを追いかけた。




 *敵パイロット視点*


(さすが死神と言われるだけはある。この機体アストレアでなかったら何度死んでいたことか…)


 少し疲労した様子の男は、背後から迫ってくるテンシュカをレーダーで確認したが、問題ないと判断した。


「ケルベロス、後ろの機体を止めろ!そいつは私が連れて行く!」


『『『了解!』』』


“ケルベロス”三機がテンシュカをビームライフルで牽制する。しかしテンシュカは手に持つ巨大なビームブレードで放たれたビームを弾いた。ケルベロスの一機が、ビームソードを手に持つ。


「無理して足止めしようと思うな!そいつの間合いに入ったら即死だと思え!」


 忠告を素直に受け止たのか、決して近づかずにビームライフルとミサイルを放ち続ける部下に安堵する。


(私のとは違うアストレア…私の物とさせてもらう!)


 アストレアは、少し形の異なるアストレアにビームライフルを放った。




 *セーマ視点*


「ぐっ!」


 三機に囲まれた後食らったビームの衝撃から回復しないうちに、今度は敵アストレアから放たれたビームがセーマを襲う。ギリギリ意識を手放さなかったが、まともに操縦することができなかった。


(なにか…何かが迫ってくる……対処を)


〈敵機接近。衝突します。衝撃に備えてください〉


 アストレアが盾を構える。しかし速度が乗ったビームハルバードの一撃に、セーマの意識が耐えられなかった。


(みんな……でも、これでもう)


 セーマは瞼を閉じた。




 *アイシャ視点*


 アイシャの操縦によってテンシュカはほぼ真横に進路を変え、三機のカークスの内一体を強襲する。


「邪魔じゃ。どけ」


 咄嗟に盾を構える敵機に“快晴”を突き出し、盾の角度を変えることによってがら空きになった胴体へバズーカを放つ。敵機は逆の手でコックピットを守ったようだった。


(防がれたが、片腕をやった。これでこいつの脅威度は下がる)


 残りの二機がビームライフルを構えているのを感じたアイシャは、目の前の機体を蹴りつけてその場を離れる。


(残り二機…)


 アイシャの視界の端に、敵に拘束され今にも連れ去られそうなアストレアが映る。


「っ!オピス!」


 少し離れていた場所で戦っていたオピスが、アイシャの呼びかけに応じてビームキャノンで狙撃を行う。オピスが攻撃を受けながらも放ったビームは、敵アストレアに真っ直ぐ飛んでいく…が、先程までアイシャと対峙していた三機がシールドで防ぐ。


 思わず舌打ちをするアイシャだったが、息を吐いて気持ちを切り替え、冷静になる。


(セーマは連れ去られた。ナグルファは敵戦艦三隻を相手に大立ち回りをしておる。クティスはそのナグルファの護衛、オピスをはじめとするカークス隊は敵のカークス隊と未だ交戦中。オピスに至っては無理な狙撃を実行した影響で左腕を損傷し、他のカークス隊メンバーも善戦しておるが、敵の数を相手に持ちこたえるのがやっとであろうな。そして私の位置は少し離れておるから、これ以上敵陣に切り込んでは包囲されるじゃろうな。敵アストレアの護衛と思しき三機はアストレアと共に退いた…)


 アイシャは迷う。感情は今すぐセーマを取り返せと叫ぶが、冷静な自分がそれを無理に実行するのは得策ではないと呟く。


「……………総員、撤退じゃ。被弾した味方をカバーしつつ後退。ナグルファに帰投せよ」



 アイシャは敗北感に打ちひしがれながら、ナグルファに帰投した。


 ―――――

 ―――

 ―


 アストレアに乗るパイロットは、バルホール帝国の戦艦が退いていくのを見て一息つく。


「死神と言えど、さすがに味方を見捨てはしなかったか。しかし、あれは本当に危険だな。どんなパイロットが乗っているんだ?アストレアに攻撃を当てつつ、被弾と言えるような被弾が一つもないとはな。まるでおとぎ話の英雄のようだ」


 パイロットはふと機体に貼られた写真を見る。が、すぐに目線を外した。


「まあいい。このアストレアのパイロットに聞けばわかる話だ。…さて、アストレアに乗っているのはどこの誰だ?どこまで知っている?本当に認められているのか?疑問は尽きないが、それももう少しでわかる」


 目の前に迫った戦艦の、カークス収容ハッチが開いた。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 敵のアストレアに乗ってるパイロットの名前出すかすごい悩んだけど、名前は一度も出てないやつなので出す意味無いなって思ったので出しませんでした。

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