第12話 皇女襲来
オピスから話を聞いた数日後、セーマがいつまでたってもニベ公国に戻る気配が無いビーサムに疑問を覚え始めたころ、艦長からの放送がセーマの耳に届いた。
『これからビーサムは一度停止し、メンテナンスをする。機体が無事なカークス隊は一度宇宙に出ろ。そうじゃないクルーは全員一度司令部に来るように。また、格納デッキやエンジン部、生活スペース等も全て一時閉鎖し清掃するため、必要なものをもって行動しろ』
少し違和感を感じつつも、セーマは指示どおりに大切なものをもってアストレアがいる格納デッキに向かう。
「アストレア、起動しました」
アストレアに乗り込み起動させたセーマはオペレーターに通信を入れる。
『了解。それじゃあカタパルトの方を開けるから、そこから出てくれ』
「了解」
セーマは指示に従って宇宙空間に出た。セーマの後ろからもこの前の戦闘を生き残ったモートや、
『よし、カークス隊は少しビーサムから離れておけ』
セーマはやはり違和感を抱えながらも、索敵もかねて母艦から少し離れる。
〈熱源反応を検知。与えられたデータと照合。バルホール帝国のモートⅡ四機と正体不明機が一機です。〉
「バルホール帝国?なんで近くに…」
先頭の正体不明機が他四機を残して一直線にビーサムに近づいていく。そしてそのままエンジン部を手に持ったビームライフルで撃ち抜いた。
「……え?」
黒煙を上げ、連鎖して爆発するビーサムを見てセーマは唖然としていた。
セーマは目の前の光景を呑み込めないでいた。味方であるはずの、バルホール帝国に所属していると思われる機体からの攻撃。
四機のモートⅡは未だ遠くに待機しており、ビーサムを攻撃した機体はこちらにビームライフルを構えていた。
ビームが一筋の線を描きアストレアへと向かってくる。
「!っ敵機!?」
セーマは放たれたビームを盾で受ける。敵機はこちらを観察しているようであった。
〈回帰者の気配を察知。〉
一瞬で余裕の無くなったセーマの目に、モニターの文字は映らない。セーマは敵機を排除するためスラスターを全開にした。
(ほかの四機が動く前に仕留めないと…)
セーマも敵機に対してビームライフルを撃つ。敵機はスラスターを使って横に避け、撃ち返してくる。
どうやら射撃戦をしたいらしい。そう感じたセーマは射撃戦をしつつ、近接戦に持ち込む隙を窺った。敵機が盾を手放し、背中に
「ビームより遅いバズーカなんて当たるわけが…」
セーマが回避しようとした瞬間、バズーカの弾が爆発する。
「なっ!…!」
セーマはビームライフルを盾に収めビームソードを構えると、目の前まで迫った敵機のビームソードを迎え撃つ。
「まさか…目くらましとしてバズーカを使い、一瞬で詰めてくるなんて…しかもいつの間にかシールドも拾って…」
〈回帰者が敵対中と判断。一部リミッターを解除。〉
「リミッターを解除?何を言ってるんだ?」
その時、アストレアの装甲の極一部が取れ、取れた装甲の下の金色の部分が露わになる。敵機もこれには動揺を隠せず、甘くなった攻撃をセーマが避け、ビームソードで攻撃を加える。敵機はシールドで防ぐが、勢いを殺しきれずに距離が開く。
「よくわからないけど、決着をつける!」
アストレアを急発進させる。
「アストレアの速さはまだ知らないはずだ!」
そのまま敵の背後に周り斬りかかる。
「な!?」
モニターに映る銃口。敵はこちらを見ている様子はないし背後の敵に照準を合わせることなどできるわけがない。しかし事実として敵の銃口はしっかりとこちらを捉えていた。
「負けた…」
思わずセーマの口からその言葉が漏れる。敵の銃口からビームが発射され、アストレアに襲い掛かる。
「アストレアの性能を知らなかったのは僕の方か…」
一度ビームに貫かれる未来が頭によぎったセーマだが、アストレアの装甲はビームを受けても貫かれることは無かった。
「何発も食らったらわからないけど、一発耐えれただけでラッキーだった。とりあえず距離を…ん?」
何かが高速で敵機の元へ向かっていく。
「あれは…剣?」
敵機はアストレアと同じぐらいの長さの剣を手に持つ。片側からビームが刃の様に展開しており、まるで刀の様な見た目となっていた。
明らかに殺す気である。先程ビームを防いだアストレアの装甲も、ビームと実体剣が合体したようなあの武器ではさすがに無傷ではいられないだろう。
敵機が脇構えの体制を取った。セーマも呼応するように盾とビームソードを構える。
セーマはひりついた空気を感じた。勝負は次の一撃で決まるであろうことが予感できる。
敵機の剣がわずかに動く。
「っ!」
来る。そうセーマが思った瞬間、
『両者戦闘を中断してください。もう十分でしょう?第三皇女様』
突然のオピスからの通信に、セーマは固まることしかできなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
モートⅡ
モートの後継機。モートの持つ汎用性をそのままに、性能が全体的に増している。
テンシュカ(正体不明機)
とある国の偉い人の乗機。シルエットはそこまで太くないが見る者に力強さを感じさせる。特に可笑しなギミックも無く、モートのように汎用性が高い機体。しかしコストが高いため量産されておらず、唯一のパイロットは対カークス、対戦艦に重きを置いている。バルホール帝国と戦った国の兵士はこの機体を見るだけで恐怖心が呼び起こされるらしい。
〈武装〉
対カークス用大型ビーム刀「快晴」、ビームソード、ビームライフル、内蔵ガトリング砲、バズーカ、シールド等。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます