第2話 初陣
大型のモニターが起動したことでセーマの目に外の風景が映る。操縦系統がワーカーと大して変わらないことを確認したセーマは、操縦する
「急がないと…」
セーマは危機に陥っているかもしれない父親を思い、カークスを操縦しているという興奮を押し殺しつつ、機体を前進させた。
〈
瞬間、セーマの体を圧力が襲い、体が、機体が空に浮く。星の重力圏にいながら、かなりのスピードで空を飛んでいることに驚いたセーマだが、空を飛ぶカークスは存在しないわけではない。驚愕より焦りが勝っているセーマは大して動揺せず反応の元へ向かった。
***
黒い機体色の三機のカークスは、隊列をなして侵攻していた。顔を動かして警戒する様は、落とし物を探しているかのようだった。
「まったく。こんなド田舎にまで来させて、上は何を考えてるんすかねぇ」
『まあいいじゃねえか。おかげでただ散歩しているだけでいい。宇宙の奴らが可哀そうになるぜ。』
『お前ら気を緩めるな。ここは敵の星だ。いつ奴らのカークスが出てくるかわからん。』
「分かってるよ、隊長。だがこんな自然しかないところ、警戒のしようがねぇ。」
『だとしてもだ。敵地では何が起こるか…』
三機のカークスに、何かが接近していることを知らせるアラートが鳴る。
隊長と呼ばれていた人物は即座に戦闘態勢に移ったが、油断しまくっていた他の2機は突然のことに動きを止めたままだった。
『
隊長の指示に従うことすら間に合わず、二機のうちの一機にソレは降り立った。
***
セーマは軽くパニックに陥っていた。
勢いよく飛び立ったのはいいものの、その後のことを考えていなかったセーマは、反応がある場所に自らの機体を着地させた。幸いなことに三機のうちの一機には多大なダメージを負わせることに成功したが、不幸なことにセーマは二機の敵カークスに挟まれたような位置にいた。だが、セーマがパニックに陥っている理由はこれだけではなかった。
武器がない。
降り立った場所が敵の至近距離であることに気が付いたセーマは
(これでどう戦えばいいんだ!?)
無情にも、敵は待ってはくれない。
特徴的なアンテナを持つ機体は距離をとり、こちらを窺っているようだが、至近距離にいる、セーマが踏みつぶした機体と同じ見た目の機体はこちらにライフルの銃口を向けていた。
***
「なんだこの機体は…奴らは新型機を製造していたのか…?」
隊長と呼ばれた男は動揺していた。
油断は決してしていなかった。だが、早々に味方機を戦闘不能にし、目の前に堂々と立つ灰色の機体を前に、なかなか動くことができなかった。
『うおおおお!イナードの仇!』
「待て!早まるな!」
隊長の制止を聞くことなく、発砲する
***
(うわぁ!この人急に撃ってきた!?)
セーマは銃口が向いていると気付いた瞬間、ほぼ反射的に盾を構えていたため、敵の銃弾は機体を傷つけることなく盾で防がれる。
(でも防ぐだけじゃあ状況は変わらないし、もう一体に攻撃されたら…)
〈外部からの衝撃───敵対行動と判断。
目の前のモニターが文字を表示する。
セーマはその文字を視界の内に収めていたが、反応する暇がなかった。
(とりあえず目の前の敵の銃撃をやめさせれば…)
そう判断したセーマは、シールドを構えたまま敵機との距離を詰めようと前進する。
しかし、ワーカーの基準で考えてしまうセーマの操作により、機体は1秒にも満たないスピードで敵の目の前に接近する。そのことに驚愕し、追加操作が一瞬遅れたセーマは、機体同士がぶつかると思い、体を強張らせた。しかし、アストレアは敵にぶつかることなく直前で止まり、敵が撃ち続けているライフルを奪い取ると、シールドで敵機を殴りつけた。敵の機体がへこみ、いくつかのパーツが飛び散る。敵機は地面に倒れると、ピクリとも動かなくなった。
(もしかして、さっき表示されていた…)
〈背後の機体が射撃体勢に移りました。回避します。〉
突如、セーマの体を上からの圧力が襲う。背面から飛んできた銃弾が足元を通り過ぎていく。
アストレアは体を180度横回転させ、地面に降り立つ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
機体紹介
C・クローチ(黒色のカークス)
ガルドラ連邦共和国で製造された機体。量産機であり、装甲が比較的薄いため機動力が高くコストが安い。少しだけなら空中で動くことができる。隊長機はアンテナを付けることで連携を取りやすくなる。機体カラーは開発者のこだわりによってデフォルトが黒(金を払って変更する人もいる)である。滅多にないが、宇宙で用いる際は宇宙と同化することによる事故を防ぐため、赤みがかった光沢のある黒になる。
〈武装〉
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