銀翼のアストレア
やおら さゆう
第1話 変わりゆく日常
『セーマ。そろそろ飯にするぞ。』
「分かったよ、父さん。今向かう。」
気付けば太陽は殆ど昇りきっていた。僕は父さんからの通信に従い、採掘をしていた小型の作業用人型重機である“ワーカー”を操作する手を止め、昼ご飯を取りに行く。
「ほら。これがセーマの分だ。」
手渡された弁当を受け取る。今日は確か唐揚げが入っていたはずだ。僕は弁当を受け取り、意気揚々と蓋を開ける。
「セーマ、最近休憩時間にもワーカーを使っているみたいだが、どうしたんだ?」
大きな唐揚げをほおばっていると、父さんから話しかけられた。
「何でもないよ。ただ、ちょっと良さそうな採掘ポイントがあったから、そこで作業をしてるだけだよ。」
「作業をするのはいいんだが、休憩はしっかりとれよ。お前が体調を崩したら、母さんになんて言われることか。」
「体調を崩しても自分の責任だから父さんは心配しなくていいんじゃない?」
「でもセーマに手伝いを頼んだのは俺だからなあ。」
そう言って父さんは後頭部をポリポリと搔いた。
父さんより一足早く弁当を食べ終わった僕は、ワーカーを使って件の採掘ポイントへ向かった。実は父さんにも伝えていないのだが、見たこともない“カークス”を発見したのだ。
“カークス”は人型汎用兵器とも呼ばれ、重機として使われる“ワーカー”よりも大きく、パワーも強い。そのため、もし動くのであれば日々の作業が楽になるはずである。もし動かなかったとしても、状態が良ければ兵器には変わりないので、軍などに売ればいいお金になるはずであった。
あれを発見したのは偶然で、運がよかったとしか言えないのだが、運命を感じた僕は父さんに秘密にし、一人で発掘を始めた。
「さて、できれば今日中に発掘を終わらせたいな。」
カークスの発掘作業は、日々の休憩時間を捧げていたこともあって9割程度終わっている。今日の仕事のノルマはあと2時間も作業すれば終わりそうなので、3~4時間ぐらい作業の時間に使ってもいいだろう。できれば、動くかどうかのチェックも今日中に終わらせてしまおう。などと思いつつ、カークスを隠すための木やシートをとった。
「ん? あれは…輸送船かな?どうしてこんなところに。」
作業を始めて1時間ぐらい経過したころ、ワーカーの上を影が通り過ぎる。普段僕と父さんが作業する場所は田舎の方なため、飛行機なんてめったに通らないのだけど…と思いつつ上空を見上げると、飛行機に箱を刺したようなフォルムが目に映る。輸送船だ。軍ではカークスの輸送をすることもあると聞いたことがあるが、輸送船は主に商人などが物資を運ぶために使うものだ。どうしてそんなものがこの辺りに?と思った時、輸送船から何かが落ちるのが見えた。あれは───
『セーマ、セーマ!聞こえるか!?』
突然、父さんから通信が入る。
「聞こえてるよ、父さん。どうしたの?」
『輸送船からカークスが降りてきやがった!あれはうちの国で使われているカークスの“モープ”や“モート”じゃねえ!多分他国のやつだ!』
「ちょっと待って父さん。それってもしかして他国が攻めてきたってこと?」
『そこまではわからねえ。ただ、何か異常なことが起きている。とりあえず何が起こるかわからねえから、お前はどこかに隠れて───』
父さんからの通信が途絶えた。
その事実はセーマに父親に何かがあったのかもしれないと考えさせ、他国に攻撃されていると思わせるのに十分な物であった。
セーマは、気付いた時にはワーカーから降り、先程まで作業していたカークスへと向かっていた。
(このカークスが動けば、父さんを救えるかもしれない)
セーマは横たわるカークスの、コックピットハッチがあるであろう上半身の方へとよじ登った。
(ここら辺にコックピットがある筈だ)
セーマは額の汗を拭いながら、コックピットを開けるべく指を狭い隙間に引っ掛け、強引に引っ張った。
(だめだ。開かない)
あきらめきれないセーマは隙間を手で探る。
カチリ。
何かが動いたことを感じたセーマは、もう一度力を入れ、引っ張ってみる。
「開いた…」
開いたコックピットハッチに感動したセーマだが、すぐに正気を取り戻し、カークスに乗り込み、ハッチを閉め、ワーカーの起動ボタンと似たボタンを押し、動作チェックの手順を踏む。
(頼む。動いてくれ。もしかするとさっき見たカークスがここら一帯を襲撃しているかもしれないんだ…!)
願いが通じたのか、目の前の小さなモニターが光を放ち、文字を映し出す。
〈アストレア───起動。操縦者の存在を検知。〉
〈初めまして。マスター〉
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
機体紹介
アストレア
機体は銀灰色でツインアイ(カメラ)。背中には翼に見える大型の
〈武装〉
シールド、???、???
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