23
心臓が暴走機関車の様に、ドクトクと脈打ち、止まれ止まれと、何度となく繰り返しても止まるどころか、動機が早くなる。
苦しい、でもそれがたまらなく心地よく、愛おしい。
そんな矛盾が渦巻く感情を抱えながら、脱衣所のドアに背を預け、乱れた成句を正す。
びっくりした。慌てていたとはいえ、まさか真也先輩の目の前に例の巾着袋が弧を描いて落下するなんて。
母の悪戯なのか、本気なのか全くわからない餞別物資のせいで、しなくていいドキドキ迄もを友香は味わう事となった。
制服を脱ぎながら、そこでふと思う、さっきのを先輩が開けてしまってたら、そこでふと鏡に映る自分を見る。
顔は普通、髪は少し色つやには気を付けってるので、その辺の子たちに負けない、後はぁと自身の首から下へと視線を向ける。
可もなく不可もなくな胸のふくらみ、太ももの大きさは、おそらく細いほうだろう、お尻もまぁ、悪くはない、だが、こう見て改めて思う、欲もないが、悪くもない、いわば普通だ。
そう思うと、妙にため息が出て、とりあえずすべてを脱ぎ捨て、お風呂場に入る。
昨日も思ったのだが、普段先輩がここで、などともうと、自然と胸が高鳴り、落ち着かなくなる。
先輩の使うシャンプーの香りを自分の髪へと、というのもまた、それらを増長させ居ていた。
さらに昨日は気にしなかったのだが、お風呂である。
この後自分が入り、その後に先輩が入る。
「はっ、いかん、いかん、流石に変態よこれ・・・」
よく漫画などで見る、せんぱぁ~い、私たちが入った後のお湯飲まないでくださいよぉ。などというシーンが度々出てきて、そのたびに主人公は赤面しつつ否定する。
そのシーンがたまらなく好きなのだと、声を大にして言いたい。
「それにしても。千春さん大丈夫なのかしら」
気がかりなのは千春の事だった。
友香自身は千春の事をあまり詳しくはない、知っているのは、自分の大好きな人のために、猪突猛進になって後先考えず、気が付けば盛大に転んでいる。そんな姿ばかり見ているので、バカと天才は紙一重、という言葉がある様に、その部類の人なのだろうと、冷静に思う。
同じ人を好きで、その好きって気持ちを言葉にできない、幼馴染。
「近すぎると、いえなくなっちゃうのかなぁ」
湯船につかりながら、考えを巡らせていると、ついつい言葉が口をついて出てしまう。
「悪い人じゃないから、余計にもどかしいのよねぇ」
そう言いながら、バシャッ、と顔にお湯をとばしながら、負けるな私。と友香は気合を入れるのだった。
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