山からの電波は遠くへ届く。もちろん海の上にも

 さて、アマチュア無線の概要をなんとなくつかんでいただけたところで、話を進めましょう。


 何度か移動運用を繰り返すうちに、こんなことを学びました。

・高いところからCQを出すと、多くの人と交信できて楽しい。

・人里離れた辺鄙な山なら、邪魔が入らず快適に過ごせる。


 そんな無線の理想郷を求めて、地図とにらめっこをしていたところ、最適なロケーションが見つかったのです!


 具体的な地名は伏せますが、そこはクルマを使って山頂の手前まで登れる辺鄙な山でした。しかも遠く都市部に向かって開けています。無線人口が多ければ多いほど、交信の機会は増えるので、大都市まで見晴らせる山は電波を出すには理想的な場所でした。


 待ちに待った次の日曜、私はクルマに機材を積み込み高速道路を飛ばしました。目的の山頂までは3~4時間の距離です。自宅を早朝に出発してもアンテナ設営が終わるのは太陽が高く昇った昼ごろのことです。


 早速、運用を開始すると、予想どおりかなりの数の人と交信できました。そこは電波が遠くまで飛ぶことはもちろん、ちょっと珍しい場所でもあったからです。


 アマチュア無線は通信技術の訓練という側面がありまして、パイルアップという交信を希望する多くの局から同時に呼ばれる状態を上手にさばくことも求められます。


 マイク片手にパイルアップをバッサバッサとさばきながら、もう一方の手で交信記録簿ログに交信データを書き込んでゆきます。このパイルさばきが上手くいくのは、快感であります。


 効率的にパイルをさばくにはコツがありまして、それは重なって呼ばれるコールサインを2,3同時に聞き取ってメモをしておくことなのです。


 そして運命の時。

 複数聞き取ったコールサインの中に、その人のものがありました。

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