第3話 序列と称号 そして本物へ
辺りは木々に囲われ、近くには小川も流れている。水が綺麗なのか川魚も泳いでいる。そして、川の近くにある大きな樹木。その樹木の上にウッドハウスが建っている。
「ここがネオ君の所属してるギルドのホーム……」
「あぁ……さ、中に入ろう」
「待て。説明も無しにをホームに入れる気か。ネオ」
あれ、なんか空気がピリピリしてる? もしかして、私歓迎されてない!?
「これから所属予定の人だけどそれでも?」
「俺らに紹介も無しに加入だと?舐めてんのか、お前。序列に入れたからって調子乗ってんのか?」
「わ、私! エレナ・スカイハートと申します!」
わわわ、やってしまった……。この獣人の人怖くて声裏返っちゃった。もう終わりだ……トホホ。
「あぁ? エレナ・スカイハートだぁ? ネオお前、依頼内容と違うじゃねぇか」
「そんなキレないの。あの娘が怖がっちゃうでしょ!」
「あぁ? お前は引っ込んでろ!」
「あんた、私にそんな態度とっていいの? ドリアの料金私が払ってあげたのに」
「それはそれ、これはこれだろうが」
「お前ら! さっきからうるさい!!」
大きな声がウッドハウスの方から聞こえた。その場にいた四人が声のする方を見ると、下着姿の女の人が酒瓶を持ちながら立っていた。その人はオッドアイで黄緑とオレンジの瞳の色をしていて、頬にはピエロのマークがあった。
「お前ら朝ッパラからうるせーぞ!」
「いや。もう昼ですよマスター」
この人がここのギルドのマスター? あの怖い人がマスターって言ってるから本当なんだろうけど、明らかに、だらしない酔っ払いのお姉さんでは?
「まあ、朝も昼も数時間しか変わらないさー。早く中入りなよ。もちろんそこの女の子もね」
そう言われてエレナ達はハウスの中に入っていった。ハウスの中はバーになっていて、とてもオシャレで、カウンター席の前には大量のお酒が置いてあった。
「席に座って待っといてくれ。服着てくるから」
ど、どうしよう……マスターって人が居なくなってからずっと沈黙だぁ……。怖い獣人の人はずっと私のこと見てくるし。髪が赤いお姉さんはお酒飲み始めてるし。ネオ君はウトウトしてて眠そうだし。
「はい、ただいまー! それじゃあ話を聞こうか」
話の説明はネオ君が全部してくれた。なんで私を暗殺しなかったのか。何故私をここに連れてきたのか。
「あ、そういうこと。なら入っても良いわよ」
「いいのかよマスター! 他のヤツらの意見聞かなくてよ!」
「だって、あいつらほとんど戦闘狂じゃん? 一人を除いて。みんなそんなに、気にしなそうだし別いいっしょ」
ほいほい付いてきた私が言えることじゃないですけど、マスター軽すぎますよ。
「それじゃあ、自己紹介が必要だね。私はここの二代目ギルドマスター。クラウン・ジョーカー。そして、このスーツを着てる白髪で目つきの悪いこいつが、レグルス・サマリー。で、あそこで酒を飲んでる赤い髪の女が、リカ・ワインレッド。ネオのことは知ってるからいっか」
「私は、エレナ・スカイハートと申します!これからよろしくお願いします!」
「うん、よろしく」
私はマスターと熱い握手を交わした。マスターの手は細長くて、しなやかで温かくて優しい手だった。
「あの、私はなにをすればいいんですか?」
「特になんもしなくていいけど、私たちのギルドに入ったからには強くなってもらうよ。一人で勝てるぐらいにね」
一人で勝つ……王国騎士団の兵に勝てるようになれってことかな。私には長い道のりだな……でも、入れてもらうんだから、精一杯頑張んないと。
「あ、もちろん相手は国ね」
「国!?」
えぇー! 国!? 規模があまりにもデカくない!? 普通は人相手じゃないの!? いや、もしかしたら聞き間違いかもしれない。
「すいません、聞き間違えたかもしれないんですけど相手は国なんですか?」
「え、そうだけど」
聞き間違いじゃなかったー! そもそも、国相手に勝てる人なんか居ないよ。
「ちなみにこのギルドに所属してる全員国相手に勝てると思うよ。実際何人か崩壊寸前まで追いやったし」
ここにいた! めちゃくちゃ近くにいた。もしかしてだけど、ここにいる人達って危ない?
「まぁ、国相手に勝たなくてもそれに匹敵する力があればいいんだ」
「国に匹敵する力……」
「つまり、マスターが言いたいのは序列に入れって言いたいんだ」
「そう、流石ネオ!私の言いたいこと分かってるぅ」
「序列って?」
「ふん、そんなのも知らねぇのかよ。序列ってのは十二の国の魔法評議員のトップが話し合って決めるものだ。まぁ、最強を決めるランキングだ」
「そう、そのランキングに入ってほしいなって。ちなみに、この序列ってのには十二の国すべての冒険者が対象されてて、裏ギルドや王国の騎士団も対象になってるの。その数およそ十万。そしてそのトップ二十人が序列ってのに選ばれるってが、今のエレちゃんの目標かな」
十万人いる中の二十人に選ばれないといけないの!? そんなの私絶対無理ぃ!マスター鬼だ! てか、いつの間にかエレちゃんって言われてるし。
「追い打ちをかけるわけじゃないけど、ここのギルドに所属するエレちゃん以外の十二人全員、序列に選ばれてるんだよ」
つまり、世界最強の人達がこのギルドに十二人いるの!? ヤバすぎ!
「ちなみに、選ばれると『称号』ってのをもらうよ」
「『称号』ってなんですか?」
「称号も知らねえのかよ。称号ってのは選ばれた二十人に贈られる別名みたいなもんだ。だから、別名を持ってるヤツは国に匹敵する力を持ってるってことだ。別名はその人が使う魔法や戦闘スタイルなどから付けられる。」
「そ、そんな人が二十人もいるんですか……」
レグルスさん結構怖い印象だけど、分からないところがあれば説明してくれるし、もしかして面倒見がいいのかな?
「ちなみに、私の別名なんだと思う?」
「マスターのですか?」
マスターの使う魔法や戦闘スタイルとか一切分かんないから検討つかないな。今のところ、だらしない残念お姉さんってイメージしかないから全然分かんないな。
「しゅ、酒豪とかですか?」
「わはは! しゅ、酒豪! ハハハ腹痛ぇ! お前あだ名つける才能あるぞ!」
「笑いすぎだこのバカ猫!」
「い、イッタ! ここ最近で一番痛い拳くらったわ」
レグルスさん殴られたりするんだ。結構意外かも。まず、仲間に手をあげるマスターとは……。
「そ、その、マスターの称号ってなんなんですか?」
「そうだったね。バカ猫のせいで忘れてた。私の称号は『失笑の道化師』だ」
「『失笑の道化師』……。あのなんでそんな別名なんですか?」
「私は、ジョーカーっていう希少種族なんだ。道化師っのはそこからきてる。失笑ってのは戦闘スタイルからきてると思うよ」
道化師の由来はしっくりきたけど、今のマスターから失笑っていうイメージわかないな。戦闘になると怖いのかな。
「ほら、あんたも称号言いなさいよネオ」
「あ、えっと、僕の称号は『刻帝』」
「え、なんかスゴイカッコいい! ネオ君に合ってる気がする!」
「ほら、バカ猫あんたも」
「俺もかよ……。俺の称号は『轟雷の白獅子』だ」
白獅子ってのは、多分見た目からきてるのかな。轟雷ってのは、さっき移動したときの雷からきてるのかな。
「で、さっきまで酒をずっと飲んでて、今酔いつぶれてるリカの称号は『封鎖の女帝』っていう称号を持ってるよ。ちなみにリカは魔族だよ」
「え!そうなんですか!? 全然気づかなかった……。ここのギルドって色んな種族の人がいるんですね」
「そうだねー。他にも、エルフや鬼人、龍人とか精霊もいるよ」
「本当に色んな種族の人がいるんですね」
「ま、これからのことは寝てから考えよう! エレちゃんも今日疲れたと思うから、もう寝な。ネオあんたの隣の部屋空いてるから、そこにエレちゃん案内してあげて」
「了解です」
そして、これから私の部屋になるであろう場所に連れて行かれた。隣の部屋がネオ君って聞いたから、なんか安心する。
「そういえば、ネオ君ってギルドのみんなには結構ため口なんだね。私にもため口で話してほしな。なんて……」
「え、マジ? いいの? よっしゃー!」
あ、あれ?思ったより簡単にため口にしてくれた。もしかして、私軽そうな女と思われてる?
「マスターから初めて会う女の人には、ため口で話すなって言われてたから、なるべく丁寧に話してたけど、疲れるんだよなー」
あ、マスターの指示だったんだ。てっきり私を落としにきてるのかと、期待しちゃった。ネオ君のバカ!
「はい、着いたよ。ここは今日からエレナの部屋だ。自由に使えよ」
「うん、ありがとう」
「じゃ、ゆっくり寝ろっよー」
「ネオ君!今日、私をお父様達から助けてくれてありがとう!」
「おう! あと、俺のことはネオでいいぜ」
「おやすみ、ネオ!」
このときに窓から差し込んでいた光は、これからの私の行く末を照らしてくれているようで、いつもより月明りを明るく感じた。
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