第17話 殺人未遂

「大丈夫かね、岩谷くん」


 医院長が俺やみんなの具合を診てくれた。


「俺は大丈夫です。それより、柑菜と理早……それと鈴さんを」

「柑菜と理早ちゃんは大丈夫そうだ」

「良かった」

「ただ、鈴さんはスタンガンを受けているからね。気絶しているから、しばらくは起きない」


 そうだ。理奈さんのせいだ。

 あんなことをするなんて……。


 でも、男共々逮捕された。

 これでもう……俺たちに危害を加えることはないはず。



「ありがとうございます」

「いやいや、こちらこそ感謝しているよ」

「なぜです?」

「岩谷くん、君のおかげで娘が助かった。聞いたよ、人質にされたって」

「ええ、まあ……。でも、俺の不幸のせいかもしれない」

「いや、それは関係ない。助けたという事実が全てだ」


 医院長はニカッと笑い、俺の肩に手を置いた。

 そう言われ、俺は少し安堵した。


 少し経ち、別の部屋で診断を受けていた柑菜と理早が戻ってきた。


「お待たせ、海里くん」

「戻ったよー、お兄ちゃん」


 二人とも元気な姿を見せてくれた。


「どうだった?」

「わたしも理早も問題なし。守ってくれた海里くんのおかげだよ」


「そ、そうかな……」


「あ、もしかして気にしてる?」

「そりゃ、ねえ……」


「悪いのは島田さん……理奈だったんだから」


 柑菜は、俺の不幸ではないとハッキリ言ってくれた。

 理早も同様にうなずいていた。


「お姉ちゃんの言う通り。お兄ちゃんは守ってくれたじゃん~」


 嬉しそうに微笑んで抱きついてくる理早。

 そうか、そうだよな。


 もう少しポジティブに考えてもいいのかもしれない。


 今までの俺はあまりにネガティブすぎたから。



「それにしても……鈴さんと理奈さんが入れ替わっていたなんて」

「そうだね。わたしも気づかなかったよ。そもそも、双子だったなんて」



 意外だったと柑菜は、ただただ驚いていた。

 あれはあまりにソックリというか、言われないと気付かないレベルだった。



「逮捕されたとはいえ、女子だからな。すぐに出てきそうだな」

「うん。理奈さんは、姉である鈴さんに対してスタンガンで傷害を負わせたくらいだからね。それでも十分すぎるけど」


「ああ、そうだ。鈴さんは大丈夫なのかな」


「どうだろう。パパが診ているけど……結構心配かも」

「マジか」

「詳しくは明日分かると思う」

「分かった」



 結果的には、鈴さんは何も悪くなかった。

 俺が勝手に勘違いしていただけだ。

 だからこそ謝りたい。

 改めて関係を修復できればいいなと思う。



 ――翌日。



 事態は進展するどころか、悪化した。

 院長が俺を呼びだした。

 どうやら、鈴さんのことでいろいろ判明したようだ。



「岩谷くん、残念だが……」

「え……鈴さんに何が!?」

「スタンガンの威力が違法レベルだったようでね……。感電死レベルの改造がされていた」


「……つ、つまり」


「鈴さんはかなり危険だ。しばらくは目を覚まさないかもしれない」

「そんな!」


「でも、安心してくれ。このことを警察に伝えたところ、理奈さんは殺人未遂の容疑で再逮捕になった」


 医院長は険しい表情でそう言った。

 そうじゃない。

 俺は鈴さんともう一度話がしたかったんだ。

 けれど、これでは……。



「鈴さんに会えないんですか!?」

「面会謝絶。親族以外は面会の許可は出せない」

「なぜ!」


「警察の判断だからだ」



 それ以上、医院長は言わなかった。なんだよ、警察の判断って。

 そんなことで会えないなんて。

 でも、これ以上のワガママは医院長に迷惑を掛けてしまう。追い出されても文句は言えない。



「分かりました」

「素直でよろしい。岩谷くん、君のことはとても信頼しているんだよ。娘を頼む」

「はい……」



 鈴さんに会うことは叶わない。

 でも、いつかきっと話せる日が来るはずだ。



 病室へ戻ると、柑菜と理早が着替えていた。下着姿を晒し、なんなら理早は丁度ブラを外してポロ――って、これは!?



「「きゃああああああっ!!」」


「す、すまん!!」



 着替え中だったか。


 こ、これは……ラッキーだったな。

 って、イカン。後々が怖い。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る