第11話 義妹かもしれない

 病院へ戻った。

 女の子は、柑菜から手当を受けていた。


「擦り傷と捻挫というところね。軽傷で良かった」

「あ、ありがとうございます……」


 彼女は少しおびえていた。

 車が突っ込んできたんだから……当然といえば当然か。


 俺もいまだに震えが止まらない。



「ところで、お名前を聞いても?」

「わ、私は……井中です。井中いなか 理早りさといいます」


 俺はその苗字を聞いて、少し引っかかった。

 あれ……どこかで聞いた覚えのある名前だ。


 いったい、どこで……?


「井中さん、学生さん?」

「はい、そうです。星河高校一年です」

「えっ、ウチと同じで一個下かぁ!」

「そうなんです!? じゃあ、彼氏さんも?」


「「えっ」」


 唐突にそう振られ、俺も柑菜も顔を真っ赤にした。ちょ、まてまて。いきなり彼氏とか、マジかよ。そ、そりゃ……そういう関係になれたら嬉しいなとは思ってるよ?


 けど、まだそこまでには至っていない。

 俺に告白する勇気がないからだ!


 でも、いつか……いや、そんな場合ではないな。


 ここは肯定するべきか、否定するべきか。


 イエスかノーか半分か。

 いや、半分はないな。


 選択肢は二つに一つ。


 ここまで間違えれば俺はゲームーオーバーになりかねん。


 焦って脳内CPUを巡らせていると、オーバーフローしそうになった。あぁ、ダメだおしまいだぁ……なんて思っていると――。


「彼は……海里くんは特別な患者さんだよ」

「そ、そうなんですね。へえ……」

「うん。専属で看ているんだ」


 井中さんは、非常に驚いていた。

 柑菜は看護師ナースの衣装をしているし、普通に働いている人と思うわな。しかし、実のところ俺専属。


「ところで、あの……助けていただき、ありがとうございました」


 今度は俺に感謝を述べる井中さん。


「いや、俺は咄嗟とっさだったし、それに車は勝手にスピンして突っ込んでいった。俺はなにもできなかった」

「いえ、それでも助かりました。あなたはヒーローです」


 頬を赤く染め、潤んだ瞳で俺を見つめる井中さん。……めちゃくちゃ可愛い。

 そもそも、容姿がアイドルレベル。

 こうしてお近づきになれるだけでも奇跡だぞ。


「いや……それほどでも」

「ところでお聞きしたいんですが」

「なんだい?」


「この病院に“岩谷”という男の子が入院していると思うんですが、ご存じないですか?」


「「ん?」」


 俺も柑菜も首をひねった。

 岩谷……。


 そんな珍しい苗字の奴はそうはいない。


 多分、俺だ。



「岩谷は俺かな。岩谷 海里っていうんだけど……」



 その瞬間、井中さんは驚愕していた。

 驚いて立ち上がり、俺に抱き着いてきた。


 な、なにごと!?


「お兄ちゃん!」

「は、はいぃ!?」


 お、お兄ちゃんって……どういうことー!?

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