夜が来て
王宮と、それを囲う街に夜が来た。
その夜の中、馬を借りて人通りのなくなった道を右往左往するケサムの姿があった。
商人の老夫婦に化けたマグマとアリア姫をずっと探していたのだ。
マグマはケサムのラクダに乗って逃げる際、脅してきたが、ケサムはそれで諦められるほど、切り替え上手な男ではなかった。
妻のアリシアがいなくなって十八年。他の女性と一緒になることもなく、妻を思い続けていたのだから。
「絶対あの老夫妻はなにかを隠している」
ケサムは辛抱強く当たりを入念に見まわし、暗くなると、ランタンに火を灯し深いシワに影を作って、さらに慎重に当たりを見まわした。
すると、ケサムは王宮の近くまで来て、柵の外から、王宮内の警備が、何時もより多いことに気が付いた。
そして、王宮の裏手で自分のラクダが座り込んでいるのを見つけた。
「まさか、アリシアはまた王宮に勤めているのか?」
ケサムは馬から降り、自分のラクダの背中を撫でた。
常夏の夜の罪 @hitujinonamida
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