アリア姫の記憶の夢

 アリア姫は夢の中で幼い日の思い出を見ていた。


 それは、まだアリア姫が5歳くらいの頃、母と王宮の庭で花をつみ、花の王冠を作っていた時のこと。

 アリア姫は父の王冠を作り、届けに行こうとした。

 すると、庭に面した廊下で父が立っているのを見つけた。

 アリア姫は走って父親に近寄り、花の王冠を掲げた。

「お父様の分よ?」

 父は悲しそうな顔をしたかと思うと、次には顔を強張らせた。

「なにを言う! この城のモノは、全てわたしのものだぞ! 草一本、小石一個でもそうだ! お前はわたしからこの城のモノを間借りしているに過ぎんのだぞ! お前のモノなんて、何一つない! 覚えておけ!」

 父である王は、そういうと、アリア姫の手から花の冠をひったくり、床に投げた。

 

 自分はあの時泣いただろうか?

 そこは覚えていなかった。

 きっと、泣いて泣いて、母が来てくれてきっと慰めてくれたんじゃないかというあやふやな記憶があった。

 でも、その母もアリア姫が十二歳になる頃には、病気で亡くなってしまった。

 今アリア姫に仕えている侍女たちは、みんなアリア姫の母であるアリシアを知っている。


「アリア! アリア!」

 自分に必死で呼びかける声に、アリア姫は記憶の悪夢から目が覚めた。

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