ケサムの家

 商人の老夫妻に化けたマグマとアリア姫がケサムの後を追うと、ケサムは、街をかこう塀を出て、少し離れたところの一軒家に入った。

 その家は屋上があり、そこには望遠鏡が置かれていた。

「星を見る人なのね」

 アリア姫は隠れるのを忘れて、立ち上がった。

「アンタも星がスキ?」

「アンタじゃなくて、アリアって呼んで」

「ごめん。アリア」

「お母様が、よく星の物語をしてくれたの」

「そうなんだ。もしかしてアリアのお母さんのことなんか知ってるのかな? ああ、様呼びが良い?」

「良いわよ。今更気を使われてもむずがゆい」

「ねえ、思ったんだけど、こそこそ隠れる必要ないんじゃないかな? 指輪を持って、これに似た指輪は他にないのか、聞いてみるんだ。さっきから誰も俺らを商人だと思って疑わなかっただろ?」

「そうね、それは良い考えだわ。でもどこの商人か聞かれたらどうするの?」

「隣国のドアドルが良いだろ。あそこは海に面してるから」

「それは、良いわね。王族同士も親戚筋だし」

 二人は腕を組んで、ケサムの家のドアを叩いた。


 ドアを開けたケサムは、老婦人の姿に化けたアリア姫を見て、目を見開いた。

「あ、あなたは、アリシアのご親族の方なんですか?」

 マグマとアリア姫が指輪のことを聞く前に。別の問いを受けてしまい、二人は戸惑った。

「アリシアって?」

 マグマがアリア姫の耳元で耳打ちする。

「わたしのお母さん」

「お母さん!?」

 こっそり話しても目の前なので、聞こえてしまっていた。

「ああ、いえいえ。私の母方の親戚すじの人よ」

 アリア姫は咄嗟にシワ枯れ声を出した。

「そ、そうでしたか? アリシアは、私の妻は今どうしていますか?」

 アリア姫は余りにも驚いて、目を点にしてその場で硬直し、気絶してしまった。

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