街の教会
アリア姫に化けたアニスが、隣国の王子の持ってきた船の模型に釘付けになっていた頃。
アリア姫本人は、初めて入る街の教会のステンドグラスの美しさに釘付けになっていた。
「凄い、宝石みたいだわ」
商人の老婦人に化けたアリアのうっとりした美しい顔に、周りの参拝者もうっとりする。
マグマは身元は隠せても、美しさは隠せないものだなと思った。
「‥‥‥そろそろ帰らないと、家の者が心配するわ」
「もう、良いの?」
深く瞼をふせ、なにか物思いに浸っているアリア姫に、マグマは切ない気持ちになった。
「‥‥‥ええ、私にはやらなければいけないことがあるもの。これまで何不自由なく暮らしてきたは。だから私は、私の役割を果たさなきゃ。最後に生まれ育った街を初めて見れて嬉しかった」
アリアは、柔らかい言葉でマグマに向かって素直な気持ちを話した。
その時だ。
「だれか! だれか! この指輪を同じデザインのモノを持っている人はいませんか!」
「教会ではお静かに!!」
と言う特大の祭司の声が教会にわんわんと響き渡り、その場は一瞬で静寂に包まれ、全員の視線が、突然大声で教会に入ってきたケサムの方へ注がれた。
「あっ、あれ私の指輪と一緒だわ」
「しっ名乗り出ちゃ駄目だ、罠かもしれない」
ケサムは指輪を掲げたまま、当たりを見まわし、持ってるという人間が、人っ子一人いないのを確認すると、がっくり肩を下げて、教会を立ち去った。
「なんだ、アイツ怪しいな」
マグマがケサムの背中をじっくり観察した。
「どうして、お母さんのと同じ指輪を持ってたのかした」
マグマがアリア姫の言葉に、肩を引き上げる。
「お、お母さん? アレは、君のお母さんの指輪だったのかい?」
「ええ、そうよ。後は全部、お父様の物だからあげられなかったの」
「どうして、そんな形見、俺に渡したのさ?」
「だって、私より若い子が売られるって聞いて、それにアナタが私を脅したんでしょ?」
アリア姫は、人差し指をマグマに向けて振り回した。
「ああ、なんてこった」
マグマは頭を抱え。そして、閃いた。
「さっきの男、つけて見ようか? 強くはなさそうだしきっと見つかったって何にもされない」
アリア姫はその提案を聞いて、ときめいた。もしかしたら自分の知らない母のことが分かるかも知れないと感じた。
「いけないわ、でも行く」
こうして、マグマとアリア姫はこっそりケサムの後をつけた。
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