ウィンドーショッピング

 アスニが姫の身代わりとして、身支度をしていたその頃。

 マグマとアリア姫は、商人の老夫婦の恰好をして、市場を歩いていた。

「ねえ、凄い! あそこ金の食器がいっぱいあるわ」

 アリア姫が商店を指さして上下にジャンプした。

「アレは、メッキだよ。食事に使ったら身体に悪い」

「じゃあ、何故売ってるの」

「見栄えするからだろ? それより今老人だって忘れないで」

「あ、あら、あそこには宝石がいっぱいある」

 アリアはマグマから離れ、宝石が沢山置いてある商店の前に立った。

「こんなに沢山どこから取れたのかした」

「全部、合成だよ」

 マグマは慌ててアリア姫の手を取り、その商店から直ぐに移動しようとした。

「じいさん、うちのものが合成だって?」

 マグマは大柄な店主を目の前に、わざとらしく笑顔を作った。

「いや、いや、豪勢だっていったのさ」

「そいつあ、ありがてえ。それで目当ての商品はあったのかい?」

「いや、いや私たち夫婦は、もう歳だから。あ」

 マグマはその時、宝石店の一つの指輪に目が留まった。

「なあ、これいくらだい?」

「ああ、それは一万だ」

「それはちょっと高くないか?」

「駄目だよ、それ以上安くしたら、うちだって生活がある」

「まあ、それ。わたしの持ってた指輪にそっくりだわ」

 アリア姫が胸に手を当てて指輪を見たので、マグマは宝石店の商人に指輪を差し出し、いつの間にか財布を開けていた。

「はあ、また俺の生活費へっちゃった。もう勝手に動かないでよ」

「わかったわアナタ」

 マグマは、アリア姫に腕を組まれて、一万が消えてしまった後悔が何処かへ吹き飛び、そのままアリア姫をエスコートした。

「仲の良いご夫妻だこと」

「ああやって、いくつになっても手を繋いで、歳を取れたら良いけどね」

 二人の通りすがりの女性の会話がマグマとアリア姫の耳に入り、二人は顔を合わせて、苦笑いした。

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