再度姫の部屋に侵入

 マグマは姫を連れ出して、そしてどこかへ連れ出してあげようと心に決めて、そして、その夜、細心の注意をはらい、また彼女の部屋へ忍び込んだ。

 もう、一度侵入したことで、経路は分かっていた。

「お姫様、アリアお姫様」

「あら、あなたまた忍び込みに来たの?」

 真っ暗な中、窓から入ったマグマが声をかけると、アリア姫が返事をした。

「早く逃げないと警備兵を呼ぶわよ」

 彼女はベットから呑気にそう言った。

「そんなこと、しないでよ。君と少しだけ散歩をしたいだけなんだ」

「散歩ですって?」

 アリア姫はすっとんきょな声を出した。

「君は、偉い人の娘だから、自由に外へ出歩けないだろ? 俺が守るから、異国に旅立つ前に、どこか行きたいところはないか?」

 アリア姫はなにも答えなかった。

 マグマは彼女を自分がなにか怒らせたのではないかと思って、いつでも逃げられるように、窓の方に張り付いた。

「どうして、そんなことをしてくれるの?」

 彼女の声が震えていたので、マグマは返事に困った。

「アンタの笑顔になって欲しいからだよ。だけど君は、俺と違って、何の不自由もしてないし、なんでも持っているから、それくらいしか、してあげられない」

「わたしのものなんて、ひとつもないわ。全部、王様の持ち物だから」

「なんだって?」

 アリア姫の言っている意味が分からず、マグマは聞き返した。

「わたしの来ている服も、部屋も、全部、王様のものなのよ」

「王様は、そんなリボンのついたワンピースを着るのかい?」

「ふっふふふ」

 アリア姫は吹き出して笑った。

 その笑顔が見たくて、マグマは数歩ベットの方に近づいた。

 アリアがそれに気が付いて、小さく俯く。

「そうね、ここを出ていく前に、わたし、わたしの国の人々がどんな暮らしをしているか見たいわ」

「でも、そしたら、朝まで待たなきゃな」

「良いわよ。でも、わたしがいなくなったら、みんな大騒ぎだわ」

「大丈夫、俺に良い考えがあるよ」

 マグマはにっこり微笑むと、ドアの方へ向かった。

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