再侵入

 祭日の昨夜にマグマが忍び込んだことが露見していたので、翌日今日の警備は厳重になっていた。

 警備兵の数が、昨日の倍になっている。

「たくっ、面倒だな」

 マグマは茂みに隠れて、何処からかすきを見て忍び込めないか慎重に観察した。

 すると、マグマの目に一人の警備兵の姿が目に留まった。

 他の兵士に気づかれないように、こっそりあくびをしている。

 頭にはターバンを巻いているので、目しか出ていないが、仰け反っている体勢で疲れてあくびをしていると分かった。

 多分だが、昨晩もいた警備兵ではないかと思った。姫の部屋にも入ってきた気がする。急いで逃げたのでそこは定かではなかったが。

 だとすると、昨晩から徹夜で警備を任されているのかも知れなかった。

 今、この国では貧困から暴動が多発している。

 兵士たちは王宮内の警備だけでなく、城下町またその近辺の周回も行わなくてはいけない。

 あくびをしていた警備兵はマグマとさほど背恰好が変わらない。

 マグマは警備兵に向かって小石を投げ、見事眉間に命中させた。

「んん!?」

 その警備兵は、目をぱちくりさせてから、周りをきょろきょろ見渡す。

「どうした!」

 他の警備兵が声をかけてきた。

「なんか今、頭になにか小さいもんがぶつかってきたんすよお」

 こめかみを指の間接でさすりながら槍を左右にふる警備兵に、他の警備兵が少し困った顔をした。

 同じように周りを見渡すが、マグマは完璧に隠れていて誰かいるようには見えない。

「それ、頭痛じゃないのか?」

「‥‥‥そうかな?」

「お前、疲れてるんだよ。昨日から休んでないんだから」

「そ、そうかもな。ああ王様がもっと人を増やしてくれて、給料も増やしてくれれば」

「しっ、お前気が緩み過ぎだぞ」

「わっわるい」

「はあ、そこら辺の茂みを見回る振りして草に隠れて、立ったまま休んどけよ、ここには俺もいるから」

「そ、そうか」

 マグマに小石を投げられた警備兵は、てくてくとマグマのいる茂みに近づいてきた。

 そして、どすん。とマグマに頭を剣の鞘の部分で殴られ気絶してしまった。

 そして、マグマは警備兵の服装を拝借し、何食わぬ顔で他の警備兵に加わった。

「わりい、俺ちょっとトイレ行きたい」

 と、言ったのは勿論警備兵に化けたマグマ。

「はあ、早く済ませて戻れよ?」

「ああ、直ぐにでも戻るよ」

 マグマはハッキリとした口調で返事をし、王宮内へ堂々と侵入した。

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