姫様の憂鬱

 マグマは翌朝、質屋で指輪を売った。

 指輪は予想以上の値段がついた。

 マグマはすぐに出来たお金を、知り合いの牛飼いの少女のパイジのところへ持って行った。

 おかげでパイジは身売りせずに済み、大好きなおじいさんのアドムとこれからも一緒に暮らせることになった。

 パイジとアドムはマグマの深く感謝し、いつでも家に泊まって良いといってくれた。

 アドムの借金を返しても何倍もお釣りが残ったので、マグマは自分の三か月分の生活費だけ抜いて、お姫様に返しに行こうと決めた。


 同じ頃、白亜の王宮では、当方からの客人と王が談話室で会合をしていた。

 そこにはいなくてはいけない姫の姿がなかった。

「まったく、姫様は、またどこに隠れられたんだ!」

 爺やが口ひげを荒い鼻息でなびかせながら、勇み足で王宮の廊下を歩き回った。

「申し訳ありません。わたくしたちが少し目を離したすきに、どこかへ消えてしまわれて」

 爺やの後ろについてきた次女がしらが申し訳なさそうに頭を下げていた。

「はあ、昨夜の祭りも腹痛で休まれて、今日もなんて許されませんぞ!」

 まだどこに隠れているかも分からないお姫様に、爺やは小言を言い続けた。


 結局お姫様は書庫の空の本棚の中にうずくまって、りんごをかじりながら本を読んでいた。


 姫は仕方なく、渋い顔の爺やと侍女頭に後ろ指をさされながら談話室に向かった。

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