第5話 服の歴史って難しいね

 どうも、中華風ファンタジーを普段書いている人間、狩野緒 塩(かのお・しお)と申します。小説の投稿に専念していたため、前回から投稿期間が空いてしまいました。


 今回は、服装についてです。前回は髪型の話をしていましたが、古代中国の服もよく分からないです。


 古代中国の服装は時代によって形が結構変化しています。ということはつまり、小説の描写や挿絵を見れば、どの時代の服装を参考にしたのかが分かるのです。もちろん、いろんな時代を混ぜている作品もあるため、特定できるのは服装の時代のみですがね。


 さて、ここからはこのエッセイのキャッチコピーにもあるように、古代中国の服装を調べているだけで土日が潰れた話をしようと思います。


 私の書いている中華風ファンタジーの元ネタの時代は第三話でも言った通り、前漢~後漢、特に後漢です。


 しかし、前漢~後漢は服装の資料が少ないこと少ないこと。ネットを調べてもどこから引っ張ってきたのか分からない画像と共に紹介されている記事ばかりが出てきます。馬王堆漢墓のウィキペディアや、サイトに載っている衣服の名称と思わしき言葉をコピペして検索を繰り返しました。


 ――鶴氅衣? 裲裆? 裋褐? 上衣下裳? ネット上の日本語の記事には細かいことが書かれていない。この服装は漢代にあったのか? この服装が出てくる詩があるようだが、漢代よりも後だ。日本語の記事がないならば中国の、bilibiliや、知乎(zhihu)ではどう書かれているか――


 さらには、古代中国の衣服に関する論文がネット上(大学機関リポジトリ)で見ることができたため、読んだりもしました。その論文は歴史の視点というより服飾の視点から書かれた論文であったので、衣服の構造やどのように着用されていたのかに対しての考察が書かれていました。今まで資料集めのために読んでいた歴史専門の視点から書かれた論文とは着眼点が違っていて面白かったです。


 そうして、気づけば土曜日と日曜日が丸々潰れていました。悲しい。


 その後には本を調べてみたのですが、確実っぽい情報としては漢代では直裾袍と曲裾袍があることくらいでした。(細かいことは他にもあるのですが、根拠資料を示すのは面倒なので割愛します)


 えっ、じゃあ登場人物皆、直裾袍か曲裾袍着るしかなくなってしまうやんけ。


 確実な服装が二種類しかないとなると、結構な数の登場人物の服がおそろいになってしまうという第一の壁にぶち当たりました。


 そして、すぐに第二の壁にぶち当たります。

 第四話にも登場した、秋一睿チウ・イールイなどの上着です。↓見た目のURLです。

 https://kakuyomu.jp/users/KanooSio/news/16817330666849066432


 ぶち当たった壁というのが、”羽織みたいな上着”はどういう名称なのかが分からなかったこと”です。


 古代中国の上着と調べて出てきたのが、”袍”だったのですが、袍って聞くと、長い裾で盤領袍みたいなイメージを思い描いてしまうんだけど……となってしまいました。第四話でも言ったとおり、登場人物のキャラクターデザインを先に決めていたのがここでも響いてきました。


 和服の羽織のイメージで、古代中国にもあるやろと高をくくってデザインをしたのが良くなかったようです。(実際に似たような形の衣服として褙子があるようなのですが、宋などの時代で流行したらしく漢の時代で着用されていたのかは私には分かりませんでした。ちなみに着用しているのは女性ばかりが出てきます)


 第二の壁の苦しまぎれの対策としては、小説本文中では名称を出さずに”外套”とだけ書くことでした。苦しまぎれすぎる。


 第一の壁の話に戻ります。登場人物おそろいの服問題についてです。直裾袍と曲裾袍については図があったほうが良いと思うので、私が描いたのを示しておきます。(服の見た目や構造については、史実と違う可能性があるため信じないでください)


直裾袍は、下記のURLのような服装であると思われます。(日本の着物と見た目は似ていますが、構造が違うらしいです)

↓直裾袍を着ている拙作の登場人物、棗愈ザオ・ユィーのURLです

https://kakuyomu.jp/users/KanooSio/news/16818023212262142427


 曲裾袍は、下記のURLのような服装だと思われます。

↓曲裾袍を着ている拙作の登場人物、◯◯◯さんのURLです。

https://kakuyomu.jp/users/KanooSio/news/16818093075180634009


 皆このような服装だと見分けがつかないのです。しかし、図らずもここで第二の壁となっていた外套の設定がうまく生きてきました。上着を着ているか否か、上着の着方はどうか、上着の長さはどのくらいかによって個性が出てきます。例えば以下の通り。


↓上着をちゃんと着るタイプの人、柳聰リウ・ツォン(読んだ本には、このタイプの上着があったので、漢代にもあったのかもしれません。ちなみに歴史の長い組織のトップなので、裾は長めです)

https://kakuyomu.jp/users/KanooSio/news/16817330669390299764


↓上着をちゃんと着ないタイプの人、棗绍ザオ・シャオ(この時代にはないと思われる盤領袍を着ていますが、新しい物好きという言い訳でごまかしておきます)

https://kakuyomu.jp/users/KanooSio/news/16817330668224571885


 こういうふうに、時代と会わない服装をしている時は設定をでっち上げ、なるべく時代に沿った服装を心がけるようにしました。


 というわけで、今回の話は古代中国の服装は難しいという話でございました。古代になればなるほど服装自体が残っていない物も多く(漢代は残っているものもある)、絵画や立体物でしか当時の服装が分からないこともあります。調べても調べても分からないものはあるので、ほどほどにして描き始めたほうが良いかもしれないですね。

 

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