第2話 自身への縛りはほどほどに

 どうも、中華風ファンタジーを普段書いている人間、狩野緒 塩(かのお・しお)と申します。


 今回は小説の縛りに関する話です。


 私は中華風ファンタジーを書くにあたって、個人的に縛りを設けることにしました。


一つ目、カタカナ語を使わないこと。

二つ目、武侠、仙侠の専門用語をなるべく使わないこと。

三つ目、モチーフにした時代に登場しない言葉や物を極力使わないこと。


 これが苦労の始まりでした。この縛りによって、私は自分で自分の首を絞めてしまったのです。いわゆる自縄自縛です。



 一つ目のカタカナ語を使わずに表現するという縛りについては、中華ファンタジーっぽさが出せそうだと思ったからです。ほんの軽い気持ちだったのです。さらに、カタカナ自体も人名以外は極力使わないようにしています。


 しかし、Web小説ではカタカナ語を用いられている中華風ファンタジーも多くありますよね。カタカナを使ったとしても他の要素で中華っぽさを出せば、それは立派な中華風ファンタジーですから。これについては、技量と方向性の問題だと言えるでしょう。


 それにしても、カタカナを極力使わない小説を書き始めて分かる、カタカナの大切さよ。カタカナを使いたい! と思った瞬間が今まで何回もありました。「バレてる」とか「トラウマ」とか特に使いたかったですね。私は元々軽めの文体であるという自認があるので、特に書きにくくて苦しみました(今も苦しんでいます)。



 二つ目の武侠、仙侠の専門用語をなるべく使わないことという縛りです。これは私が武侠や仙侠の用語にあまり詳しくないことと、武侠・仙侠用語にあまり詳しくない人でも読めるような小説にしたいという意図があったからです。


 しかし、二つ目の縛りも苦難の始まりでした。


 武侠、仙侠の専門用語を使わないとどうなるか?


 その答えは簡単。小説独自の用語を作る羽目になり、そのため読みにくくなってしまいました。専門用語を使おうが使わまいが、結局読みにくい小説じゃないか! なんてこった!


 私の書いている小説には死体を操る人が出てきます。その操られた死体のことを僵尸きょうし(キョンシーと言ったほうが分かりやすいですね)という言葉を使わずになんとかやり過ごそうとしました。でも結局思いつかず、普通に「動く死体」と言っています。おとなしく僵尸きょうしと書いたほうが分かりやすいまである。



 そして三つ目、モチーフにした時代に登場しない言葉や物を極力使わないこと。これにも意図はあります。やっぱりモチーフとなる時代があるならば、その時代に忠実なものにしたいという思いがあったからです。まあこれも苦労の種です。


 例えば、特に苦労するのは”大丈夫”という言葉です。この言葉は、古代中国では”立派な大人”みたいな意味なので、少し違和感がでます。”問題ないよ”や”いいよ”という文章で表現するようにしています。


 でも、たまに書いている中華風ファンタジー小説を読み返すと、普通に”大丈夫だよ”と言ってたりするので、慌てて直したりしています。(極力直していますが、もしかしたら見落としているかもしれません……!)


 もっとも、中国ドラマの翻訳で普通に大丈夫だよとか出てきたりするので、考えすぎだぞと言ってしまえばそれまでですがね……。


 他にも、”禹歩”という山に入るときの歩き方や呪術を指す道教用語(この言葉は日本にも伝わっていますね)も出したかったのですが、これは禹王という古代中国の王とされる人物が元ネタとなっています。小説の世界観的に禹王はたぶん存在しないので、出せなかったのです。


 そもそも、現実世界に存在しない妖鬼や呪術が出てきている時点で、現実世界に囚われすぎるのも良くないですけれどね。


 そういうわけで、自戒もかねて、物語を書くうえでの縛りはほどほどにしないと後で苦しむことになる、という話でございました。


 自縄自縛には、皆様もお気を付けて。

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