第125話「修学旅行、終幕」

 それからは、特に何もなく予定は進行した。

 というか、三日目はほとんど何もないのだ。

 二日目で観光スポットは回り切っているし、あとは新幹線に乗って帰宅するだけ。

 俺のよく知るラブコメでも、修学旅行編の最終日に割かれたページ数、確か十ページくらいだったと思う。

 なので、語ることもあんまりないと思う。

 俺も、基本的にはない。

 では、三日目について語ることが全くないかと言われれば、それは違うのだ。



 ◇




 高校二年生全員が学校に到着して解散した後も、俺達教師は解散とはいかない。

 各々、やるべき仕事が溜まっているからである。

 俺であれば、修学旅行に行っている間に他の体育教師が代理で受け持ちのクラスを指導していたのだが、それに関する引継ぎをしなくてはならない。

 加えて、うちの学校では生徒指導が体育教師の担当とされているため、それに関する仕事もしなければならなかった。

 結論から言えば、俺が帰宅したのは夜の八時ごろである。

 月島家が比較的職場から近くて助かった。

 これで遠かったら、さすがに笑えない。

 合鍵を回して、扉を開け、玄関で靴を脱ぐ。



「ただいまー」

「お帰りなさい、手助さん」



 とてとてと、玄関まで絵里が迎えに来る。

 エプロンをつけていることから、ちょうど食事を作ってくれていたとわかる。

 ……まあ、返り遅くなるって連絡したしな。



「お疲れさまでした、本当に」

「ああ、ありがとう」

「あの……」

「うん?」



 絵里は、がばっと両腕を広げて、それなりにある胸を張った。

 俺は、意図を察した。

 というか、俺も望んでいたことだった。



「じゃあ、失礼します」



 俺も両腕を広げて、ぎゅっと絵里を抱きしめた。

 身長差があるので、ちょうど腕で絵里の形のいい頭を抱きしめる形になる。

 


「……はああ、久しぶりですね、こうやって抱き合うのも」

「そうだな、たった三日のことなのに、随分久しぶりに感じる」



 ちょうどいい位置にあった絵里の頭をなでながら、俺は改めて愛おしさが高まってくるのを感じた。



「手助さんも、ハグしたかったんですか?」

「そりゃそうでしょ」



 見下ろす格好になっているため、絵里の表情は見えないが――真っ赤になっている耳を見て、嬉しそうな声音を聞けば表情は容易に推測できる。 

 あと、絵里の息がちょっと荒い気がする。

 鼻息がお腹に当たってちょっとこそばゆい。

 別に嫌じゃないし、出来たらずっとこうしていたいのだけれど。



「ところで絵里、火は大丈夫か?」

「あー、一応いったん止めたんですけど、確かにあんまり放置すると冷めちゃうかもですね」

「んじゃ、一旦俺は手洗ってくるから、そしたら一緒に料理しようか」

「はーい」




 ちょっと不満そうな顔をしつつ、絵里はのろのろと俺の体から離れた。

 


「食べ終わったら、一杯その、イチャイチャしような」

「……っ!はいっ!」




 ぱあっと目を輝かせて、絵里は台所に駆け出していった。




「廊下は走るなよー」



 そんなことを昔ながらの癖でつい言ってしまう己に苦笑しつつ、俺は洗面所に向かった。



 ◇



 結局調理自体はほとんど終わっていたため、俺は配膳くらいしかやることがなかった。

 皿とスプーンをテーブルの上に置き、手を合わせる。



「「いただきます」」



「今日はビーフカレーですね」

「おお」



 普段作るカレーは豚肉なのだが、俺はビーフカレーも好きだ。

 ちなみにチキンカレーやシーフードカレーも好きだし、なんならグリーンカレーやドライカレーも好き。

 これ、なんだか俺がガキみたいだな。

 まあ、男なんていくつになってもガキだし、カレーが好きな生き物ではあるのだが。



「おいしい」

「おいしいですね!」



 牛肉はトロリと口の中で溶けて、カレーの邪魔にならない。

 むしろ、牛肉がカレーのうまさを何倍にも引き上げているとすらいえる。

 



  ◇◇◇


「彼女をNTRされたら、何故か彼女の妹がギャルになって迫ってくる」

 ↓

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カクヨムコン参加予定の最新作です。

今作と同じNTRざまぁものとなっておりますので、面白かったら応援☆☆☆などよろしくお願いいたします。

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