第52話「間男の愚行」
五号――女の一人に他の女といるところを見られてからもう二週間になる。
「あー、またお金なくなっちゃった」
お金ってどうして無くなっちゃうんだろうね。
五号から巻き上げた金、競馬ですった分も含めてだいぶ残ってたはずなんだけど……ビットコインとFXに溶かしちゃった。
ビットコインとかFXって俺からすると完全にギャンブルなんだよね。
だからこうして時々手を出してしまうんだけど。
人によっては、そんなものに手を出すなんて馬鹿だと思うかもしれない。
けれど、俺からすればそういう価値観を持っている人間の方がよほど不幸だと思う。
「お金なんてその気になればいくらでも手に入るしなあ」
親譲りの、異常なまでに整った顔立ちのせいか、異常なまでにモテた。
好きになった女は勝手に告白してくるし、興味のない女も寄ってきた。
そういう経験を積むと、女が虫のように見えてくる。
俺が何を言っても、何をしても、こいつらは俺のことが好きで仕方がないらしい。
それこそ、街灯に纏わりつく羽虫と大差ない。
「だったら、せいぜい有効に使ってやらないとなあ」
適当に言葉をかけてなだめてやれば、大抵の女は俺の肉便器兼ATMに成り下がる。
美人でもブスでも、中学生でもババアでも、彼氏持ちでも人妻でも、その気になればどんな女でも俺のモノに出来る。
「五号は連絡がつかなくなっちゃったし、とりあえず六号と七号に電話してみるか」
五号――最近俺が一号と寝ているのを見て俺から離れた身の程知らずのことを思い出す。
顔がまあまあなのと、結構頑張って金を作ってくれるからまあまあ重宝してたんだけどな。
あれはダメだ。
自分の身の丈を理解していない。
こっちは中学の時から女が三人を割ったことなんてないってのに。
あの程度の格の女が、俺に対して独占欲を発揮するだなんて身の程知らずにもほどがある。
「んー、にしてもどうするかなあ」
最近は人生が順風満帆すぎて、もはややることがない。
金には困っているようで困っていないし、身の回りの世話も一号がやってくれるし、女も。
「あー、五号の抜けた穴を補充するかあ」
スケジュール管理が面倒だから七号までで止めてるんだけど、欠員が出るとそれはそれでなんだか気持ちが悪い。
うーん、適当にナンパするのもなんだかなあ。
あっ、また一号に適当な女を見つけさせるか。
「あーあっ、俺の人生って本当に楽だよなあ」
苦労もなく、嫌なことなど何もなく、すべてが俺の思うが儘。
イージーモードすぎるということを除けば、本当に俺の人生はバラ色なんだよな。
退屈だけど。
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