第20話「彼女達がゲーム配信をするわけ」
【むらむら先生がよくファンアート描いてるやつだ】
【正直配信でやって欲しいなとは思っていた】
「先生確かにこのゲームのイラスト描かれてますよね。これまでプレイされてるんですか?」
「あー、アカウントの作り方がわからなくてプレイできてないんだよね」
「ですよね。俺が先生のアカウント、今日作りましたもんね」
「ご、ごめんて」
【そういえばイラストは描いてたけど、ゲームのスクショとかはアップしてなかったような】
【元々先生ってイラスト以外はほとんど投稿してないから】
ガチャ。
元々は、
しかし、世は大デジタル化時代。
「今回は水着イベントのカジキマグロとマダイのダブルピックアップなんだよね」
カジキマグロという、アホ毛が特徴のキャラクターと、マダイという赤髪が特徴のキャラクター。
既に通常衣装は実装済みなのだが、今回は夏ということでそれに合った特別な衣装を着ている。
具体的に言えばカジキマグロは競泳水着で、マダイの方はフリルのついたふわふわした水着を着ている。
「どっちもエロいですよねえ」
「わかる。むらむら先生はどっちが好きとかあるのか?」
「悩ましいなあ。どっちも胸でかいからなあ」
「先生って本当に巨乳好きだよな」
【わかる、じゃねえよwww】
【巨乳好きなの知らなかったわ。普通にいろんな女の子描いてるから】
【先生意外とそういう発言もするのな】
「あ、むらむら先生は大体こういうことばっかり言ってるよ。皆さんが思ってるよりこの人って低俗なんで」
「ちょっとちょっと、何でさも私だけがおかしいみたいな扱いを受けているんですかか?助手君も割とノリノリですよね?」
むらむら先生は、美少女が好きで、描くイラストもほぼすべてが美少女キャラクターだ。
さらにいえば、巨乳キャラクターを好む。
もしかしたら、自分にないからこそキャラクターにそれを求めているのかもしれない。
むらむら先生のガワも、実物の月島と比較すると、十割増しくらいになってるし。
「助手君、なんだか変なこと考えてないですか?」
「いや、別に、そのようなことは……」
ちゃんと純粋な気持ちでやましいことを考えていただけである。
嘘はついてない。
まずいな、付き合いが長いゆえに思考を読まれたのだろうか。
「ともあれ、やっていきましょうか」
俺は、画面を操作してゲーム画面を表示する。
右側に、縦長の、むらむら先生のゲーム画面。
そして左側に、同じく縦長の俺のゲーム画面が映し出された。
「改めて、今日の企画を説明するよ。ガチャ対決、です!」
「俺とむらむら先生がガチャを引いていって、先にピックアップキャラが出たほうの勝利というのがルールだ。ちなみに、同タイミングで出た場合や、どちらも天井まで出なかった場合は引き分けになるぞ」
【意外とちゃんとしてて草】
【勝ったら何かあるの?】
「はい、勝者は敗者に対して六万円以内のプレゼントを要求できる権利を得ることができます。なぜ六万円なのかは、このゲームをプレイされている方はご理解いただけるのではないかと思われます」
むらむら先生が、淡々としゃべる。
【ああ、十連三千円で、二百連の天井まで回したら六万ってことか】
【勝者は確実に元が取れるスタイルなの草】
【うっ、嫌な記憶が】
【トラウマ刺激されちゃう】
「ていうか、助手君はズルくないですか?なんで君だけ無料団子が多いんですか?」
「まあ、今朝からやっててちまちま貯めていたので。まあ誤差みたいなもんだよ」
このゲームは、デイリーミッションなどをこなすか、あるいは課金することで団子というアイテムを得ることができる。
団子は、ガチャでキャラクターを引くために必要なアイテムだ。
ファンの人では、このゲームのことを海鮮桃太郎などと呼ぶ人もいるらしい。
閑話休題。
ともあれ、課金することで得られる団子を有料団子、そしてデイリークエストやイベントなどをこなすことで無料で得られるものを無料団子という。
お金でアイテムを購入して、そのアイテムを使ってガチャを引く。
ソーシャルゲームとしてはありがちな、生々しさを消すためのマネーロンダリングシステムである。
ちなみに、ゲームを始めたばかりでクエストをこなせるはずもないむらむら先生の団子は大半が有料団子となっている。
ゲームを始めたばかりの人に対してはスタートダッシュを支援するために無料団子が配布されてはいるのだが、それを加味しても、すでにむらむら先生は三万円以上課金している。
いや俺もそれくらい課金してるんだけどね。
「ぐぬぬ、絶対に勝って見せますからね。公式イラストレーターの恐ろしさを味わわせてやりますよ。ちなみに、課金団子の方がピックアップの排出率よくなるって聞いたけど?」
「それデマですよ」
「そうなんだ!?」
あまり大きな声では言えないが、実のところこの手のゲームに課金したことは一度もない。
課金してしまうと際限がなくなりそうで、怖かったんだよな。
これから結婚だって控えてて、無駄遣いなんてしている場合ではなかったし。
まあ、今後はこれも仕事の範疇である以上、課金も必要に応じてすることになるだろう。
倹約しなきゃいけない理由も、もうないのだし。
「ともあれ、もうガチャを引いていきましょうか?」
「そうだね、ああ、君に何を買わせようかな?」
「設定しておいてなんですけど、六万円以内って結構難しいですよね」
【指輪とか送ってあげたらいいんじゃないですか?】
【式場は……六万じゃ足りないよな、わかったよ ¥5000】
【勝手に納得して勝手に金投げてる人いて草】
【むらむら先生が思いつきそうなので無難なのって機材とかじゃないかな?】
【六万で買える機材ってあるのか?パソコンやタブレットなんて大体六桁するし】
【やはり指輪しか】
やっぱり俺とむらむら先生のカップリングを楽しんでいる人たちが多いらしい。
とはいえ、流石に恋人でもない異性にアクセサリー系はなあ、というのが本音ではある。
本当に付き合っているわけではないし。
異性に贈るものとなると、一般的には食べ物をはじめとした消えものが無難であるはず。
が、むらむら先生の考えは少し違うようで。
「指輪かあ、買ってほしいって言ったら買ってくれます?」
「俺選ぶセンスとかないんだけど」
ふむ、女の子だし、やっぱりキラキラしたものが好きなのかしら。
婚約者も、結構宝石とか好きで憧れて言ってたしなあ。
婚約指輪を贈ったときは、目をそれこそ宝石みたいにキラキラさせてたっけ。
「いやいや、こういうのに大事なのはセンスじゃなくて気持ちですから」
「気持ちと言っても、作業するとき指輪は邪魔そうだから、送るとしたらネックレスですかねえ」
「ん、そっか。それもまあ、悪くないかな」
「え、ええ」
何だこの空気。
月島が顔を赤らめながらこちらを見ている気がする。
いや、実際に見ている。横目に見ながら、首のあたりをずっとさすっている。
そういえば、首につける系統のアクセサリーが贈り物として適さない理由の一つに首輪――所有権を示すというのがある。
恋人同士なら問題ないのかもしれないが、俺たちはそういう関係ではないので。
「じゃあガチャ回しますね!」
「おう!」
【二人とも照れてて草】
【何この空気、おいしい】
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