リネルはどうやら粘着爆弾だったようです

 私達は既に宿を見つけ、部屋でくつろいでいる所。

 宿は高くも安くもなく、それなりに快適に過ごせるものを選んだ。村の皆からある程度はお金は貰っているが、冒険者として安定して稼げるようになるまでは節約をしなければならないからだ。

 部屋の中、宿に着いた時から3人は1つ疑問がある。


「何でここまで着いてきてるのよ。リネル」


 ベッドでゴロゴロと暇そうにしているリネルは体を起こして疑問を顔に浮かべた。


「え?ダメなんですか?」

「ダメって、そもそもオストポリまで同行するって話じゃない。それとも私達に今後も着いてくるつもりなのかしら?」

「勿論です!」


 リネルのその顔には偽りは無い。本気で着いてくるつもりのようだ。

 私達の目的はアシュを連れ戻す事で、リネルには関係の無い事だ。それに貴族の娘を危険に晒すような事はなるべく避けたいのだが。


「え、そんな弱いのに着いてくるの?死ぬよ?」

「ギクッ!」

 

 そこでマトイは平然と痛い事を言ってしまう。

 リネルはバレたとでも言わんばかりに大袈裟にリアクションをして見せる。

 だがその通りである。ただの猪に追いかけ回されるような人がそもそもまともに冒険者なんて出来るのだろうか。

 

「いや、冗談じゃなくて本当に死ぬかもしれないよ?」


 ルミアも追い打ちをかけるので、リネルは大きく肩を落とした。


「ダメ、ですか?」


 しかし子犬が遊びは終わりと告げられた時のような悲しげな表情を見せる。

 数時間前に出会ったばかりの特に仲が良いという訳ではない彼女だが、それでもこの表情は罪である。私達に着いてくる理由はどうであれ、ちょっと可哀想に思えてきた。


「まあ、どうしてもと言うなら……」

「え!?ヒイロいいの!?貴族の娘だし、厄介事に巻き込まれるんじゃ」

「その時は家出してた娘を保護してたとでも言い訳しましょう」


 ルミアが心配するが、リネルが口裏を合わせてくれるならなんとでも言い訳は効くだろうと思いリネルの同行を許す事にした。

 ルミアはヒイロが良いのなら構わないと了承してくれた。


 一先ず数日野宿で疲れ果てている体を休める事が最優先にする為に、今日はゆっくり休む事にした。

 幸い今日冒険者ギルドで受けた依頼は期限が長い、それまでに武器以外の装備を整える為の資金調達をする為に素材収集等の依頼を受ける作戦だ。


 そうして4人共ベットに横になった。



――――――――――



 あれから1週間。私達はそろそろ4人分の装備を最低限整えられる資金が集まる頃だった。

 薬草の採集の依頼を受け、今日はオストポリの外周にある平原へ来ていた。

 この依頼は低ランク冒険者、FランクとEランク向けの依頼と言う事もあって比較的安全なものだ。


「3人共どれくらい集まった?」

「私は12個」

「マトイは14個!」

「僕は11個ですね」


 3人はヒイロの問いに自分たちの集めた薬草の個数を共有する。


「ハッハッハ!マトイが一番多いから一番偉い!」

「運が良かっただけなんじゃないの?」

「ぼ、僕のは質が良いですから!マトイさんには負けません!」


 マトイが高笑いをしているのに苛立ちを見せながらルミアは負け惜しみを言い、リネルは負けず嫌いなのか何とか言い訳を言って見せる。

 

「はいはい、依頼の個数も確保出来たんだし帰るわよ」


 3人の会話に多少の呆れを感じながらもヒイロは引き上げる事を告げる。

 すると3人は未だ言い合いをしながらも帰る準備を始める。

 言い合いをしながらもヒイロの言う事はしっかりと聞いてくれるのは、3人がヒイロを信頼してくれているが故だろう。


 しかし帰ろうとしたそんな時、突如として魔物化した兎『ホーンラビット』が現れた。安全だと言われたこの場所に獣ではなく魔物が現れたのだ。しかもその魔物はよりにもよって一番弱いリネルへ向かって走って来たのだ。

咄嗟にリネルはその魔物に向かい合い。直後リネルの右手の先が赤く光を帯びる。しかしリネルの手に灯ったその光はそのまま消えて行き、何も出来ないでいる。


「リネル!」


 私が声を掛けてやっと避けようと動き出すリネル。しかし動き出すにはあまりに遅すぎる。

 それでもヒイロは不安は無かった。マトイが既にその魔物の間合いに入っていたからである。


「ギャンッ!」


 そんな断末魔を残してマトイに首を落とされた。


「リネル大丈夫か?」

「はい、すみません」


 剣に着いた血を拭き取りながらマトイは問いかけ、 尻もちをついたリネルは立ち上がり服に着いた土を叩きながら頭を下げた。


 ヒイロは平原の先を遠目に見た。

 この先にあるダンジョン。そこでは今異常に魔物が発生していると言う。もしかするとその魔物が溢れて安全地帯まで出て来ているのか。

 少しでも早く何とかしないと、市民にも被害が出る。


 次いでヒイロはリネルへと視線を向ける。

 そこには突然の襲撃に一時この場に緊張が走ったものの、既に先程の薬草の数での言い争いが起きている。

 しかしヒイロにとってそんな事は気にならない。気になっているのはさっきのリネルの動きだ。


 ホーンラビットが現れた時、リネルは咄嗟に向かい合い魔法を使おうとしたのだ。

 しかしその魔法は中断された。あの反応、確実にホーンラビットを倒す猶予はあったはずだ。あのまま魔法を放っていれば倒せただろうに、何故そんな事をしたのか。


 誰しも隠し事はある。しかしヒイロはリネルには他とは違う、何か少し歪さの感じる隠し事があるような気がしてならなかった。


――――――――――


早速三人に溶け込んで威張りあうリネル。可愛いけど、それでも全員を愛してっ!


あ、それと明日にはまた最新話投稿する予定ですのでよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る