第46話
国王陛下と王妃殿下の元気な声を聞いて私たちは胸をホッと撫でおろした。それでも、二人の側でユフェライラ様の息のかかった誰かが見張りについている可能性を考えて私たちはそっと様子を伺うように先に進む。ややあって、道が開け部屋と思わしきドアが出現した。
木製のドアは外から部屋の中の様子を伺うことはできない。覗き穴のようなものも無いので、部屋の中に国王陛下と王妃殿下の二人だけでいるのかもわからない。話し声からするには国王陛下と王妃殿下の二人だとは思うのだけれども。
「オレがドアを開ける。ユリアとマリアは隠れていて。」
ドアの前で立ち止まると、シルキー殿下が私たちに聞こえるくらいの小声でドアから離れて隠れるようにと促してきた。
「シルキー殿下、危険ですわ。」
私はシルキー殿下の服の裾を掴んでドアを開けようとしているシルキー殿下を引き留める。
もしかすると、ドアを開けた瞬間に襲撃される可能性もあるのだ。
「大丈夫だ。部屋の中には2人しかいない。」
「どうして、わかるんですか?」
「気配でわかる。」
シルキー殿下は気配で部屋の中にいる人数がわかるらしい。でも、気配を消して潜んでいる人がいたら?
私はシルキー殿下のことが心配でジッとシルキー殿下のことを見つめる。
シルキー殿下は私が見つめるとなぜだか視線をすっと横に逸らした。
「マリアちゃんの言うことも一理あるわ。シルキーはこの国の第一王子ですもの。時期王位継承者が簡単に危険に身をさらしてはなりません。ここは私がドアを開けさせていただきます。」
すぐ側で様子を伺っていたユリアさんがシルキー殿下の前に出た。
「ユリア……しかし……。」
「ユリアさん……。それなら、私が……。」
シルキー殿下は困ったように眉を下げた。
ユリアさんが危険にさらされるのならと、私がドアを開けると志願する。でも、それはユリアさんに止められてしまった。
「大丈夫よ。シルキーがこの部屋の中には2人の気配しかないと言ったわ。大丈夫。それに……。」
ユリアさんは小声で私たちに「大丈夫だ」と告げると、ドアの前に立った。
「国王陛下、王妃殿下。ユリアがお迎えにあがりましたわ。」
そして、ドアの中にいる王妃殿下に聞こえるように声を張り上げた。
「ちょっ……。ユリアさんっ!」
「……ユリア。」
突然の大声に私は慌ててユリアさんの肩を掴む。慌てる私とは反対に、シルキー殿下は額を押さえた。
「まあ、ユリア待っていたわ。あなたならきっと来てくれると思ったもの。それで、ちゃんとにシルキーはそこにいるのかしら?」
中から王妃殿下のものと思われるはずんだ声が聞こえてくる。
緊張感を全く感じないさせないその声からすると部屋の中にはどうやら見張りはいなさそうだ。
見張りがいないとしたら、何人もいたと思われる国王陛下と王妃殿下の近衛兵たちはどこに行ったというのだろうか。
「……はい。ここにおります。王妃殿下。」
シルキー殿下はドアの前でドアの中にいるであろう国王陛下と王妃殿下に向かって一礼をする。
「そう、中には国王陛下と私しか意識のあるものはおりません。ドアを開けて入っていらっしゃい。」
王妃殿下はそう言ってシルキー殿下にドアを開けるように促した。
というか、王妃殿下の言い回しが気になる。
国王陛下と王妃殿下しか部屋の中にいないと言えばいいのに、なぜ意識があるのが国王陛下と王妃殿下の二人だけと言うのだろうか。
シルキー殿下は大きなため息をつきながら、警戒しながらドアをゆっくりと開けた。
そして部屋の中の様子を見てさらに大きなため息をついた。
いったい部屋の中がどうなっているのか、シルキー殿下の身体が邪魔をして部屋の中の様子を伺うことができない。
「……はあ。……これは、王妃殿下がなされたのですか?」
シルキー殿下がため息交じりに王妃殿下に問いかける。
「まあ。私が?か弱い私にはそのようなこと……。ねぇ、陛下。」
王妃殿下が甘えたように国王陛下に問いかける。
「ん?王妃はとても頼りになるからな。そこらの近衛兵では王妃には太刀打ちできぬでだろう。」
国王殿下は満足気に笑っているようだった。
「王妃殿下は流石ですわ。」
ユリアさんはうっとりとした声で小さく呟いた。どうやらユリアさんは王妃殿下に陶酔しているようである。
「さて、ではここから出ましょうか。ここで気を失っている近衛兵たちは……どうしたらいいと思いますか?シルキー。」
「……拘束してこちらに放置します。その後衛兵たちに回収してもらい牢に繋げて事情を確認します。」
「そうね。では、そのようにお願いするわ。陛下、歩けますか?」
「ああ。問題ない。」
国王陛下は王妃殿下の手を取って立ち上がった。そして、部屋のドアに向かう。
私は国王陛下と王妃殿下が部屋から出てくる気配を感じて深く礼をして二人が出てくるのを待つ。
「あら?マリアちゃんじゃないの。あなたも来てくれたのね。嬉しいわ。」
「……もったいないお言葉にございます。」
私の前で王妃殿下は足を止めて、私に声をかけてくる。
私は深くお辞儀をしたまま答える。
「ふふ。顔をあげてちょうだい。」
王妃殿下の優しい声に釣られるように私は伏せていた顔を上げた。
「あっ……。」
そこには良く知っている人物が私を見てにこやかに笑っていた。
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