第3話
「はぁ~。やっぱここは癒やされるわぁ。」
アンナライラ様とユースフェリア王子に絡まれて精神が疲弊していた私は、学園での授業が終わると早々に保護猫施設にやってきていた。
さわさわとシロ様の艶々な毛並みを撫でては手から癒やしを摂取する。
本当はこのままシロ様のお腹に吸い付きたいくらいだが、シロ様のふわふわなお腹に吸い付こうとすると、ブチ様が必ず邪魔をしに来るのだ。
ブチ様というのは白と黒のブチ模様がある猫様のことだ。
たぶんブチ様はシロ様のことが気に入っているのだろう。いつも、私がシロ様に触ったあとは、ブチ様が必死にシロ様をグルーミングしている。
ちなみに、私がブチ様に触ろうとすると物凄い勢いで触るな!と威嚇してくるので、ブチ様には触ったことがない。
うう。いつかブチ様に触れて、ブチ様のお腹に吸い付いてみせるんだからっ。
「ブチ様。たまにはおさわりさせてください。」
丁重にブチ様にお願いするが、ブチ様は私のことを横目で見るとすぐにどこかに行ってしまった。
「いいもん。私にはシロ様が……。ってあれ?シロ様??」
ブチ様に目を向けているとシロ様がその隙にどこかに行ってしまった。
ガックリと項垂れている私の手をザラザラとした舌が撫でる。
「ああっ。シルバーグレイ様っ。私を慰めてくださるのですね。なんとお優しい……。」
私の手を舐めて慰めてくれたのはシルバーグレイ様でした。
ブチ様に振られて傷心気味の私を慰めてくれるだなんて、なんてシルバーグレイ様は優しいのでしょう。
私は嬉しくなってシルバーグレイ様に抱きついて背中に顔を擦り付けた。
「シルバーグレイ様。あなたはとっても優しいのですね。大好きですっ。」
「にゃう。」
シルバーグレイ様はとくに嫌がる様子もなく、私にされるがままだ。
その様子を離れたところからジッとブチ様が睨みつけるかのように見ていたことに私は気が付かなかった。
「学園でとっても嫌なことがありましたの。でもシルバーグレイ様や、シロ様、クロ様、モモ様たちに囲まれたら嫌なことも全部吹き飛んでしまいますわ。」
私は周りに猫様たちを侍らせてとっても上機嫌です。
近寄ってくる子を優しく撫でまわし、毛並みを確かめる。
毛並みが悪いと病気になっている可能性もあるので、毎日毛並みを確かめるのは猫様たちの健康を確かめるために必要なことだ。
撫でることで、私の心も癒されるのでWin-Winのスキンシップである。……ブチ様は触らせてくれないが。
「あら、なにか嫌なことがあったの?」
一緒に猫様たちのお世話をしているユリアさんに尋ねられる。
「……ええ。婚約者に婚約を破棄してやると言われてしまいました。まあ、望むところなんですけど。」
「そう。マリアちゃんは、婚約者がいたのね。」
「……はい。親の決めた婚約者ですが。正直私は乗り気ではありません。」
「乗り気じゃなかったなら破棄してもらえるのならよかったじゃない。なのに、なぜ嫌なの?」
ユリアさんはモモ様を膝に乗せ爪を切りながら訪ねてくる。視線はもちろんモモ様に向けている。
モモ様は嫌がることもなく、全身をユリアさんに預けている。
「……婚約者に好きな人が出来たんです。その人に私が呪いをかけたんだろうって詰め寄られてて。」
「まあ。呪い……。呪いねぇ。マリアちゃんに呪いがかけられるわけないのにねぇ。」
ユリアさんは頷きながら同調してくれる。
「はい。まったくの言いがかりです。でも、婚約者はそれを信じてしまって……。」
「そう。愚かな男なのね。よかったじゃない、そんな男にマリアちゃんはもったいないわ。」
ユリアさんはそう言って朗らかに笑った。
「それで?どんな呪いをかけたって言われたのかしら?」
「その子が忘れ物をしたり、階段から落ちる呪いを私がかけたそうです。」
私が正直に答えるとユリアさんは面白そうに笑った。
「それはその子がおっちょこちょいなだけね。それを他人の所為にする。なんて、考えなしな娘なのかしら。……王子もその娘も哀れね。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます