鈴の音

**********


 そう、少し押し問答があった末に先生は先に席を立って帰っていったんだ。


 そのあと私は、泣きながら杏仁豆腐を爆食いしてマスターに送ってもらって。


 ちょうど、そのあとからだ。ブラックコーヒーが美味しく感じられるようになったのは。


 カランカラン、と鈴の音が鳴る。


「おっ、先生いらっしゃい。今日は生徒さんも一緒かい?」


「あ、あの、初めまして……」


 初々しい制服姿がまぶしくて、私は少し目を細めた。


 今、私はカウンセラーをしている。今日は、先輩の仕事を聞いてみたいと、久しぶりに先生から連絡を受けてここへ呼ばれていた。


「久しぶりだね」


 先生の左手の薬指に光る指輪を確認したあと、私は、顔を上げた。


「お久しぶりです、先生。今日もコーヒーですか?」

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