もう一度
──────────
「マジでもう一回告白した方がいいって!」
雪も解けて春の兆しが見えてきたころの放課後。いきなり机をバンッと叩き、舞はそんなことを言い出した。
「ちょ、声大きいって!」
もうすぐ先生が迎えに来るんだから。聞かれるかもしれない声を出さないで。
「いや、だってさ、もう卒業じゃん! このまま返事もらわないで終わっていいの?」
「いまだに返事をもらえていないってことは、そういうことだよ。それに……今さら聞けない」
もう一度告白なんて、そんなこと私にはできない。結局はぐらかされて終わってしまったけど、あのときだって結局言い出すまでにあんなに時間がかかって……。
「ダメだよ。ちゃんと言わなきゃ」
舞は床に片ひざをついて真っ直ぐに私の目を見つめた。
「絶対に後悔する。麻衣言ってたじゃん。先生と出会えてよかったって。先生が先生でよかったって。先生だから毎日楽しく過ごせるって。告白したときはどうだったかわからないけど、告白してからもう半年経ってるんだし、卒業も近いし、先生の気持ちも前と違うかもしれないじゃん!」
舞の目が痛いほど真っ直ぐでずっと見続けることができなかった。
「だけど……」
「だけどじゃない! こ・く・は・く、するの!」
「わ、わかった。わかったから、そんなに体を揺らさないで!」
「おいおい、何やってるんだ?」
すっと肩からの熱い手が離れた。わかりやすすぎるくらいに驚いたその顔の先に、いつの間に現れたのか先生が立っている。
「せ、先生!?」
「ああ! いや、なんでもない、なんでもない! ほら、先生は麻衣を迎えに来たんでしょ。ほら、どうぞ帰って帰って」
「今日は一緒に帰らないのか? いつも無理矢理便乗してく──」
「あっ! 思い出した! 私用事があるので先に帰ります!」
話を遮ると、机の上に置いたスクールバッグを肩にかけて、舞はダッシュで教室を飛び出して廊下を駆け抜けていく。
先生は、その後ろ姿を見送りながら「急用ならなおさら車に乗ればいいのに」とぼそっと呟いた。
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