第3話 神野先生の命令
私は、決意を胸に六年生になった。
その直後、担任の先生が『自分は神様だ』と名乗ったのだから、その絶望は察してもらえるだろう。
神野先生は、第一印象とそう代わらずヘンな先生だった。
授業はそれなりにだったが、すぐに横道にそれて笑い話が始まる。
あまり宿題は出さない。
朝の会の時間に、教室に持ち込んだ自前のアンプとエレキギターに合わせて、笛の練習をさせる。
(エーデルワイスとエレキギターの組み合わせはどうなんだろう………)
私は、あまりの奇行にクラクラしたが、クラスメイトの顔は5年生の頃と比べると、とても明るく楽しそうなのであまり深く考えることはよした。
正直、クラスは『天国』というよりも『
*
神野先生が『我がクラスで、委員会を制覇しようぞ。がはは!』と神様どころか悪の支配者のような命令を言ったので、各種委員会でみんなが委員長の席を確保してきたこともある。
私もそのお祭り騒ぎに浮かされて、新聞委員会の委員長に立候補した。
しかし、転校してきて4カ月程度の私の知名度はなく、さらに委員内の男女比率も均等でないため、男子に負けて結局、書記になった。
通常、2名の決選投票で負けた場合、負けた方が副委員長に決まるところだが、新聞委員会の顧問の先生は『副委員長になりたかった人もいるかもしれないから』とその席も決選投票にした。
結果、私は2回も男子に負けて、3回目の手を上げる気力はなく、誰も立候補がなかった書記の座を譲られた。
顧問の先生の仕切りの悪さにも納得がいかず、お守りの効果も感じられず、私は泣きたくなった。
新学期からあまりいい出だしではなかった。
ただ、新聞委員会で2回の決選投票で男子に負けて、書記になったことを人づてに聞いたらしい
「本当に立候補して委員長をとってきた奴は池田と鈴本だけだ。他は手を上げられなくて推薦してもらったそうだ。
天城、お前は自分で手を上げて書記を獲って来たんだから、それはとてもすごいことだぞ」
先生に褒められたくてしたことではなかったし、3回目の手を上げる勇気はなかったのだからすごくもない。
それでも私が2回も勇気を出したことを認めてもらえたことは素直にうれしかった。
別に、神野先生の命令はきっかけに過ぎなかった。
だから、先生を恨むことはない。
私は、制服の胸のポケットにあるお守りに触れる。
人気者になれるというお守りを心の底から信じているわけではない。
けれど、それは注目されて、友達を増やしたいと言う私の決意の塊であった。
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