第2話 精霊のお守り

 6年生の初登校の前日。

 私はひとつのお守りを作った。


『ひみつのどきどき精霊おまじない』という本の中のから選び抜いたおまじないだ。

 困ったことがあると開く、私にとっては聖書バイブルだ。

 ケンカした友達と仲直りをするおまじないや、探し物が出て来るおまじない。元気のでるポプリの作り方や各種効能があるお守りやマスコットの作り方などが載っている。

 

 私がその日作ったのは、『人気者になれるお守り』だ。


 黄色のフェルトを星型に切り抜き、『人気者になれますように』と願い事を書いた紙を千切りにして詰め物にして縫い合わせる。

 そうして、出来上がった星型のマスコットをいつも身に付けて歩くと願いが叶うという。


 私は手芸が得意だったので、すぐに半分までは出来た。

 ただ、中に詰める願い事を考えることに少し迷った。

 たくさん願いすぎてもいけないと精霊の注意書きがあったからだ。


 私が最終的に書いた願い事は『いつも元気で明るいクラスの人気者になれますように。バスケで大活躍できますように』というものだった。

 まだ、だいぶ欲張っているような気もするが、このくらいは許容範囲だろう。


(妖精の力が足りなくても、私ががんばればカバーできるはずだ!)


 私は気合を入れて、願い事を書いた紙を細長く切り刻んだ。

 小学5年の二学期の終わりに転校してきた私には、まだ友達がひとりしかいなかった。

 バスケ部にも入ったばかりで、まだめぼしい活躍もない。

 人気者とは程遠い状態だ。

 

 でも明日からは、小学校の最終学年。

 クラスの人気者になって、楽しい思い出をいっぱい作って卒業したい。

 

 大人からすれば、精霊だの人気者だのというのは馬鹿馬鹿しいことに見えるかもしれない。

 いや、クラスメイトにだって知られたら馬鹿にされるだろう。

 けれど転校後、友達がひとりしかいない私にとって、それは切なる願いだった。


 私は制服の胸ポケットにその星型のお守りを忍ばせ、両手を組んで光の精霊に祈りをささげた。

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