第15話可愛い妹
ところで道往く人の視線が先ほどから痛い。
男も女も関係なく、老いも若いも幅広く。通りを歩いている人はそれほど多くはないが、全員すべからくである。五分ほどの道のりで、そんなに視線を集めるのかと驚愕したほどだ。
まるで吸い寄せられるように二人に向かった視線が、刺さるようにナツメにも向かってくる。
なぜお前みたいなモブが二人も侍らしているんだと言わんばかりである。今すぐ代われと脅してくるような熱視線もある。
いや、代われるものなら、いつでも代わるが。
モブだから荷物持ちだと声を大きくして反論したい。悲しいことだが、事実なので仕方ない、そこは受け入れている。
飛び抜けて可愛いのも考えものだな、とナツメは少しだけ同情した。
ナツメが一人で歩いていても、周囲に同化するので、誰も気にしない。
別に気にしてほしいとも思わないが。
だが、ナツメが殊勝な態度になったのもそこまでだ。
一軒目の店について、すぐにそんな態度はぶん投げることになる。
「なんでそんなもん買うんだよ!?」
「だって可愛くて!」
「バカ、これ以上物を増やすな!」
ディスカウントストアにやって来たものの、買い物かごにリンが放り込んだものを巡って、ナツメは真剣に怒った。
必需品を買うと聞いていたが、リンが放り込んだものはぬいぐるみや置物、ティーシャツである。
とりあえずは今日すぐに使うものを買うべきだと主張するナツメに、リンは欲しいからと言い張って平行線だ。
だから、物が増えるんだろう!?
青筋立てて怒るけれど、リンは全く聞き入れない。
お菓子が欲しいとごねる子供のようでさえある。
「あ、またガラクタ買って!」
「ガラクタじゃないもん!」
「どうせすぐにゴミになるだろっ」
「お兄ちゃんはお母さんみたいに口うるさい!」
「お前みたいな娘がいたら、親はそうなるだろうよ!?」
リンの親は相当に苦労しているだろうと簡単に想像がついた。
可愛いからと甘やかしていたら、家がゴミ屋敷になるのは目に見えている。リンの実家を想像するのも恐ろしい。
ナツメとリンの攻防を買い物かごを持ったユウナが眉を下げて宥めている。
「二人とも落ち着いて。お店にも迷惑だから……」
「ユウナもお兄ちゃんになんとか言ってよ」
「すぐに人に頼るんじゃない!」
「お兄ちゃんの横暴!わからずや!」
「俺は常識的な話をしてるだけだ!」
「二人とも、もう少し声を落として……」
リンとナツメの言い争う声に、ユウナの弱りきった声が重なって店内に響くのだった。
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