第37話 Re:相対性貧乳論

「ねぇ、潤一郎くん。そんな貧乳放っておいて、私のおっぱいと楽しいことしましょ?」


「ひ、貧乳じゃないもん!」


「私がHカップであなたがGカップ。つまりCカップから見たAカップみたいなものよ。そりゃ貧乳でしょ?」


「ろ、論理の飛躍~!」


 なにやら言い合っているようだが、俺の意識は二人のおっぱいにしか向いていない。


 神さまありがとう、おっぱいを造ってくれて……。


「ねえ、潤一郎くん、私とあっちの岩陰で火遊びしない?」


「なっ、なっ、なっ! 歌野ちゃん、さっきからエッチすぎます!」


「媚び媚びの甘ったるい声で誘惑した恵瑠のほうがエッチだと思うのだけど……」


 うーん、どっちもエッチなんだよなぁ。


「そういえば島崎さんはなにか運動やってるんですか? とっても逞しい体してて、どきどきしちゃいます……」


 熱っぽい視線で上目遣いをしてきた恵瑠は、俺の胸板をフェザータッチする。


 陶器のようにすべすべな指の腹がしなやかに刺激してきて、背筋が伸びてしまう。


 一見おさなくみえる恵瑠だが、その色っぽさのギャップはすさまじい。


「ねえ、潤一郎くんは焦らされるだけじゃ嫌よね?」


 今度は歌野が俺の太ももを撫でまわしてくる。


 誘うように円を描く指の動き。その妖艶な指使いは太ももから徐々に上にいく。


「う、歌野⁉」


「いいじゃない。どうせ男の子ひとりで来てるってことは期待してたんでしょ?」


「そ、そうですよ! 海に来てまで真面目ぶらないでいいじゃないですか」


「い、いや、そういうつもりで来たんじゃなくて……」


「じゃあ、なんのためなの?」


 そう聞かれても、正直に答えるられるわけがない。『いやー、知り合いの水着を見るためにナンパしなきゃなんすよねー』なんて言えば、絶対にキレられる。


 どうしまいかと言い訳を考えていると、


「潤一郎くん、私か恵瑠、どっちにするか決まった?」


「も、もちろんあたしですよね⁉」


「そ、そんなに急がなくてもいいんじゃないかな?」


 まいった。


 天川たちのところに連れて行くにしても、こんな美人だと何かと嫉妬されかねない。それは非常にまずい。絶対にしばかれる。


「じゃあ、ふたりと遊んじゃおうかな!」


「陰キャとは思えない発言ですね⁉」


「その毒舌、ちょっと傷つくなあー。でも、そういうところも可愛いかも」


「か、可愛い⁉」


 顎クイをしながら恵瑠にささやくと、彼女は一気に顔を真っ赤にして口をぱくぱくさせる。


「それによく見るときれいな唇してるな」


「ふぇぇぇぇ⁉」


「思わず食べちゃいたくなるぜ。ほら、目、つぶれよ」


「え、えっと、それは……」


「もしかしてキスするときは目を開けてたいタイプかな?」


「キキキキキキキキキキキキキキ⁉」


頭から湯気を出してパンクした恵瑠は膝を抱えてかがんでしまう。


 うーん、逆ナンかますわりにはチョロすぎる。


「恵瑠は初心なの。あまりいじめないであげて」


「そうなんだ。でも、ついいじめたくなっちゃうのは歌野の方かな?」


「ふえ⁉」


 ここまでクールな印象があった歌野が目を見開いて、顔を真っ赤にする。


「なんていうか、歌野を見てるとそういう気分になっちゃうんだ」


「そ、それは嬉しいのだけど……すこしは優しくしてほしいわね」


 明らかに動揺している歌野を抱き寄せて耳元で囁く。


「大丈夫。歌野のこと、いっぱいいじめてあげるから」


「う、うぅぅ~! 潤一郎くんの陰キャスケベおっぱい星人おんなたらしぃ~!」


 なぞの奇声をあげた歌野はそのままダッシュして逃げ去ってしまう。


 そして、それにつられるように恵瑠も逃げてしまい、俺はひとり取り残されてしまったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る