第36話 逆ナンはファンタジー
「クソ……そもそも女子に話しかけるハードルが高すぎる」
よく考えてみれば、俺は恵莉奈か天川としか話したことがない。
それ以外の女子との会話といえば「はい、プリント」「掃除やっておいて」とかそういう事務的なものばかり。
恵莉奈は幼馴染だし、天川はあっちからぐいぐい来たから打ち解けることが出来たのだ。
「そんな俺が見知らぬ女子に話しかけるなんて出来るわけがない!」
しかし、なんとかしなければ天川と恵莉奈の水着を見ないで旅行が終わってしまう。そんなの、砂漠旅行と同じだ。
「どこかに可愛くて声をかけやすそうな女の子は……おっ⁉」
いた! 胸がデカくてビキニが似合う美少女がふたり!
しかもこっちに色っぽい視線を送ってきているし、これは会話の切り口もあるのでは?
少し離れた場所にいるが、周囲の人の視線を釘付けにするほどの美貌だ。
片方は茶髪のボブカットの小柄な巨乳美少女。
もう片方は身長も胸も相方より大きいが黒髪ポニーテールの女の子だ。
雰囲気的にも声をかけやすそうで、俺はふたりの様子を伺いながら声をかけてみることにした。
「あ、あの~」
「ん? どうかしたっす、じゃない、どうかしましたか?」
「私たちに何か用?」
実際に近くで見るともっと美人だった。
小さい方の子は可愛らしい白のビキニを着ている可愛い系。大きい子の方は大人っぽさのある黒のパレオを纏った綺麗系だ。
さて、ナンパ口上は何にしようかと考えていた時だった。
「ところでそこのあなた、ちょっと遊ばないかしら?」
「えっ⁉」
「歌野ちゃん、ずるいですよ! この人はあたしが狙ってたのに!」
「ちょ、ちょっとどういうこと?」
「どういうことも何も、あなたのことを逆ナンするつもりで話をしていたの」
「そうなんですよ~。めっちゃかっこいいね~って話してて~。それなのに歌野ったら、抜け駆けするんですから!」
「こういうのは早い者勝ちじゃない」
「ぐぬぬぬ!」
なにやら既視感のあるいがみ合いだ……。
「あ、あの、俺、島崎潤一郎っていいます」
とりあえず流れを変えるために適当に自己紹介を入れる。
「私は
「あたしは
「じゃあ、よろしく。雨宮さんと菅原さん」
「歌野でいいわよ」
「あたしも恵瑠って呼んでほしいです~」
おお、なんか好感触だ!
今までナンパしても適当に流されるか無視されるかだったのに!
「それはそうと、歌野ちゃん! 潤一郎さんはあたしが先に狙ってたんですよ!」
「いやいや、私が先に」
「それって言ったものがちでずるいです~!」
「だったら公平に決めましょ?」
「公平に?」
「そう、競りよ!」
あれー? なんかこの展開もどっかで見たな……。景品にされてるのに、こっちの意思をまるで聞かない既視感に涙が出そうだ。
「ねえ、潤一郎くん。十万円払うからナンパしてくれない?」
「お金なんてずるいですよ~! じゃあ、あたしは二十万!」
「それなら私は二十万におっぱい揉み放題」
そう妖しく微笑んだ歌野は俺の左腕に抱き着いてきて、豊満な胸の谷間に俺の腕をすっぽりしまい込んでしまう。
デカすぎんだろ……。
「歌野ちゃん、色仕掛けはいくらなんでも反則ですよ! あと、潤一郎さんも鼻の下伸ばさないでください!」
「い、いや、でもこの大きさと柔らかさは、うん」
「あぁぁぁ! なんですかその天に召されたような笑顔は!」
死んでないんだよなぁ。
とはいえ、死んでもいいかもしれないし、逝きかけたのは事実だ。
「こ、こうなったらあたしも!」
今度は恵瑠が俺の右腕にくっついてくる。歌野ほどではないにしろ、十分な大きさのある胸が押し付けられて、つい意識がそっちに行ってしまう。
「潤一郎さん、もしあたしをナンパしてくれたらぁ、このおっぱい好きにしていいんですよぉ」
先ほどまでとは違い、媚び媚びのあざとい猫なで声の恵瑠。上目遣い、胸の柔らかさも相まって、見え見えの色仕掛けなのについ引き込まれてしまう。
しかし、歌野もそれを黙ってみてるわけではなかった。
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