#022 空想メソロギヰ その4

「柚葉さん、なんで……」

「グリエラさんに聞きたいことがあります」


 グリエラに対し強気で質問をする柚葉さん。


「魔王様に本当の気持ちを伝えたことが一度でもありますか?」

「それは、その……」


 顔を赤らめ、オドオドし始めるグリエラ。


「二人は何を話している?」

『さぁ……』


 訳も分からず硬直する僕と魔王。


「白凪君」


 そこに江蘭君が話しかけてくる。

 江蘭君にはまだ魔王のことを話していない。


「ここは二人の様子を見た方が良いと思うんだ」

「まぁ、そうするしかあるまい」


 黙って様子を見る僕たち。

 その最中も二人が会話を続ける。


「好きなんですよね? 魔王様のこと」

「……はい」

「ならなんで本当の気持ちを伝えないんですか?」


 会話の内容は確認できないが、どうにも柚葉さんがグリエラを叱っている絵面に見える。


「だって、恥ずかしいし……魔王様は、いつも色んな女性に囲まれて……私のことなんか、見向きもしてくれないし……」

「……それでも好きなんですよね?」

「……はい」

「……嫌いになるって選択肢はないんですよね?」

「……勿論です」


 激励するようにグリエラの肩へ優しく手を置く柚葉さん。


「じゃあこの際ハッキリ言いましょうよ!」

「無理ですよそんなこと!」


 顔を真っ赤にして、泣きながら柚葉さんに縋りつくグリエラ。


 あれぇ、確かあの人魔王様の側近でしたよね?

 間違いなく柚葉さんより強いはずだ。


『それがなんであんなことに?』

「俺に聞くな」


 柚葉さんとグリエラの会話が続く。


「ウジウジしてたって仕方がないでしょう!」

「だって恥ずかしいもん! 告白なんて、そんなこと考えただけで……死ぬ! そんなことするくらいなら死んでやる!」

「死ぬとか簡単に言うんじゃありません!」


 バチン!


 いよいよグリエラの頬に平手打ちをかました柚葉さん。


「恐ろしい小娘だ……」

『柚葉さんってあんなキャラだったっけ?』


 頬を抑えながらグリエラが続ける。


「いいんです……私と、魔王様はこの関係のままで……私が魔王様の命令に従えば、ちゃんと褒めてくれますし……本当はもっと頭を撫でてもらったり、できれば抱きしめて欲しい……なんて思ったりしてますけど、別にできなくたって……」


 ため息を吐く柚葉さん。


「私は貴方と魔王様の仲を深く知っている訳ではありません。今日初めて会って、感じたことを言わせてもらいますが……」


 ぽたぽたと、柚葉さんの瞳からこぼれ落ちる大粒の涙。


「それだと、あまりにもグリエラさんが報われないじゃないですか……」

「……貴方」


 意思が通じ合ったように、お互いの両手を強く握りあう二人。


「そういえば、まだ貴方のお名前を聞いておりませんでしたね」

「……甘神、柚葉です」

「そう、柚葉さん……良い名前ね」


 フッと微笑むグリエラ。

 それと同時に彼女の全身から凄まじい量の魔力が発せられる。


『ヤバイヤバイヤバイ、さっきの比じゃないって!』

「なんのつもりだ、小娘?」


 

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