#021 空想メソロギヰ その3
「地面に崩壊の性質をエンチャントした?」
動揺しつつも、柚葉さんと江蘭君を魔力で出来た腕で保護しながら、魔力の足場を作り出して自らの体制を立て直す魔王。
「本気で俺を殺すつもりだな、グリエラ?」
「ええ、勿論」
地面の中に潜り込むグリエラ。
さっきまでこうやって姿を隠していたのか。
「それが私の貴方様に対する忠誠の示し方にございます」
「意味が分からん」
魔王は魔術を使って即座に周囲の地面を丸ごとひっくり返してみせた。
有言実行。
魔王も本気でグリエラを始末するつもりだ。
「地面に自分自身をエンチャントしたか」
魔王がグリエラの能力の仕組みについて説明を始める。
「生前と違い、魂の状態だからできる技か。地面と同化してるとはいえ、この面積だ。今の攻撃でも本体は捉えられていないだろう」
しかしこれ以上攻撃範囲を広げると、柚葉さんと江蘭君まで巻き添えになってしまう。
そもそも魔王が立つ足場すら無くなってしまえばグリエラの独壇場だ。
だから最初に足元が狙われた。
「なら、”上”だな」
魔力の腕がダンジョンの天井を掴み、徐々に岩の塊を崩していった。
無数の腕を器用に駆使した、流石の魔力コントロールだ。
僕たちを乗せた腕がダンジョン上層へ登り始める。
「場所が悪い、一先ず逃げるぞ」
『逃げるって、最上層までどれだけの距離があるか分かってるの?』
中級ダンジョンでも三桁の階層は珍しくない。
果たしてそれまで本当に逃げ続けることができるのだろうか?
「俺を誰だと思っている?」
何層か上に登った後、魔力の動きが止まる。
そして二人を掴んでいた魔力が消え、地面に放り出される柚葉さんたち。
「逃げたのではない。こちらに優位なフィールドに相手を誘い出しただけだ」
余裕の笑みを浮かべる魔王の前に、実体化したグリエラが現れる。
「いくら貴様でも、ダンジョン全体との同化は不可能なのだろう? 最下層を起点とした十層程度の射程。であれば、射程外まで逃げるのは容易い」
「流石です、魔王様」
深く頭を下げるグリエラ。
「私が新たに身につけた能力を即座に見抜く、その審美眼。敬服致します」
「あいも変わらず解せぬ女だ」
不機嫌そうな返しをする魔王。
「殺意と忠誠心の同居した、奇妙な魂の形。いったい何が目的だ?」
「私は……」
下を俯き、どこかものありげにグリエラが語る。
「私は、ただ……魔王様に、振り向いて……」
「待ってください!」
魔王とグリエラが話す間に割り込む人物がいた。
「って、柚葉さん!?」
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