#018 作戦開始
作戦実行の日。
僕たちのクラスは中級ダンジョンの内部で実習の準備を進めていた。
本来、新入生は学園で魔術を学び、初級ダンジョンで探索の基礎を学んでから、中級以上のダンジョンで配信活動が認められるのだ。
その過程をすっ飛ばしている今の状況は、かなりのイレギュラーである。
しかし前日、初級ダンジョンにジャバウォックが出現した事件を受けて、急遽実習場所が変更となった。
という建前の元、僕たちは行動している。
すべては早急にグリエラによる被害を食い止めるための荒技だ。
「すげぇ、一年で中級ダンジョンとかヤバくね?」
「モンスターのランクも初級と比べてかなり上がるんでしょ?」
「魔術もロクに学んでないのに、大丈夫かな……」
クラスメイトの反応も様々だ。
ワクワクした反応もあるが、やはり不安そうな生徒が多い。
中級上層であれば比較的モンスターのランクは低いが、それでも新入生に相手できる相手ではないのだ。
しかしグリエラがどの階層に潜伏しているのか現時点では判明していないため、”誘い出し”が成功するまで徐々に下層へ潜っていく必要がある。
「時間が経つと共に危険度は上がる、か……」
僕は柚葉さんと二人きり、人目につかない場所で配信の準備を進めていた。
「気は抜けないね……うわぁ、心臓がドクドクして弾け飛びそうだよ……」
「落ち着いて、優君。リラックスして呼吸を整えて」
冷や汗をかく僕の頬を優しくハンカチで拭ってくれる柚葉さん。
「鶴見先生も言ってたでしょ? 頼れる助っ人を連れてくるって」
「その鶴見先生も、助っ人とやらの姿も見えないんだけど……?」
心配で周りをキョロキョロ見渡すが、やはりどこにも見つからない。
「もしかして先に下層へ潜って、安全確認でもしてくれているのかな?」
「どちらにしても、だよ……」
配信の準備が完了した柚葉さんがスマホを片手に立ち上がる。
「私たちはいつも通り配信をするだけ。いや、”今日も”ちょっと違うか……」
そう言って柚葉さんが僕の手を握ってくる。
「二人でやる配信はこれで二回目だね」
「柚葉さん……」
「一昨日の配信で一気に登録者が増えたんだから、今日の配信はとびっきり盛り上げていこうね!」
「うん!」
僕たち二人は満面の笑みで盛り上がっていた。
やっぱり、柚葉さんの笑顔は可愛い。
それを見ているだけで頑張ろうって気持ちになれる。
「あの……」
しかしそこに予想外の人物が口を挟んでくる。
「江蘭、君……?」
彼の姿を確認した次の瞬間。
僕たちの周囲をとてつもない光の輝きが覆い囲んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます