#016 作戦概要 その1
「明日は配信の実習として、クラス全員で少々難易度が高めのダンジョンに潜ってもらうことになる」
鶴見先生が真面目な顔で説明を始めた。
「当然、万が一の事が起こらないように腕利きの護衛をつけさせてもらうよ」
「その作戦の目的はなんですか?」
柚葉さんが恐る恐る尋ねる。
「私たち、いや……優君の中の魔王を頼るということは、相手は”
「その通りだ」
頷いて、スマホを操作する先生。
「これを見てくれ」
そう言って先生が僕たちに見せてきたスマホの画面には、数名の行方不明者リストが表示されていた。
「ここに書かれている人物は、全員が例のダンジョンで配信中に行方不明になっている。まず
聞いて、僕と柚葉さんは少し動揺した。
驚きはしたものの、ダンジョン内で死者が出るのは当たり前のことだ。
シンプルにモンスターに襲われて死亡した可能性も考えられる。
「行方不明者はいずれも配信中に消息を絶っており、襲撃犯に関してもある程度情報が揃っている」
「それなら対策も練れそうですね」
安堵したように柚葉さんが言うが、先生は首を横に振る。
「残念ながら相手が相手だ。我々だけでは手に負えない。確実に協力を得たい人物がいる」
そう言って先生は僕の顔をジッと見つめてきた。
「魔王、ですね……」
僕の言葉に先生は首を縦に振る。
「その、相手というのは……?」
「かつての魔王の配下。側近の”グリエラ”と自ら名乗っている女だよ」
魔王の側近!?
思いっきり知り合いじゃないか……。
「そこんところどうなの、魔王?」
『……鶴見とかいう女と直接話をさせろ』
言う通りにした方が早いなと思い、僕は魔王と入れ替わった。
「出て来てくれたようだね、魔王」
「まずグリエラ本人と考えて間違いないだろう」
早速本題に入る魔王。
「奴の目的は俺だ。今の奴に出来る範囲で目立つ行為を繰り返し、俺を呼びつけるつもりなのだろう」
それで死人が出ているのだから迷惑な話だ。
鶴見先生が続ける。
「そんなことをしなくても、直接会いに来れば良いのでは?」
「ふん、その程度の調べはついているのだろう?」
僕と柚葉さんには二人が言っていることはさっぱりだが、談笑は続く。
「”魂”だけの状態でダンジョンの最奥に縛り付けられた俺たちは、適合する生きた器と同化しなければダンジョンから出て行くことすらできない。だからグリエラは未だダンジョン内部を彷徨い、器を探しているのだろう」
「確かにそこまでは我々も調べがついている」
「なら器が見つかる前に、とっととダンジョンへ入ることを禁止すれば良いのだ」
なるほど、確かにそれなら器が見つかる可能性もなくなる。
そして運営側にはそれだけの権限があるはずだ。
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