#011 白凪優の選択。
「
それが僕に取り憑いた魔王の正体か……。
「ねぇ、さっきからなんの話をしてるの?」
甘神さんが切羽詰まった顔で訪ねてくる。
そういえばまだ何も説明してなかったね。
「すまないが甘神君、説明は後だ」
鶴見さんがキッパリと断りを入れる。
どうやら説明はまだ先になりそうです。
「今は白凪君の判断を聞きたい」
真面目なトーンで語る鶴見さん。
そりゃこれだけ色々あった状況で、僕には何もありません、今まで通りの生活を送ってもらって構いません、なんてあっさり片付けて終わるわけがないんだ。
間違いなく僕は重要な判断が必要な局面に立たされている。
ここの返答ひとつで、今後の人生が大きく変わるような……。
「君には二つの選択肢がある」
「……はい」
「我々に協力するか、魔王と共にここで死ぬかだ」
随分な極論だが、僕もそれ以外の選択肢はないように思える。
「どちらにしろ君をフリーにするわけにはいかない。しかし学園に通う限りは我々も常に君を監視することができるし、相応のサポートはする。配信活動も続けてもらって構わない」
鶴見さんたちが学園側の人間だからこその対処だろう。
しかし問題は二つ目の選択肢だ。
「それが嫌だというのなら、悪いが君には死んでもらうしかない。魔王が協力を拒む場合も同様だ」
魔王様、それについてはどうでしょう?
『問題ない、好きにしろ』
どうやら魔王は僕の選択肢に従ってくれるそうだ。
正直、僕の生死は大した問題じゃない。
心配なのは甘神さんがどうなるか、だ。
「甘神君に関しては、我々が責任を持って保護させていただく。もしかしたら多少、記憶をイジることになるかも知れないが……」
「僕が貴方たちに協力すれば、甘神さんと一緒に配信を続けても構わないということですね?」
「……いいでしょう。我々にとっても、それがベストな判断です」
だったらこれ以上の選択肢はない。
「甘神さんも、それでいいかな?」
「……うん」
僕の曖昧な決断に、甘神さんは強く頷いて了承してくれた。
「決まりですね」
微笑みを浮かべながら鶴見さんが続ける。
「貴方たちの身柄は、この鶴見怪音が全責任を持って保護させていただきます」
言って、鶴見さんが周りの兵士に指示を出した。
すると数人の兵士が救急箱のようなものを物を持って僕たちに近づいてくる。
「まずは体に異常がないか検査させてください」
「……ありがとうございます」
僕の言葉に、鶴見さんが振り向きながら右手を上げて返事を返す。
「巻き込んじゃってごめんね、甘神さん」
救護班の人たちが治療をする間、僕が甘神さんに対して謝罪する。
「でも、僕が必ず守り抜いてみせるから」
なんて臭いセリフを言ってるんだ僕。
恥ずかしくってちょっぴり笑っちゃったじゃないか。
「……こちらこそ、ありがとうだよ」
それでも甘神さんは笑って僕のことを受け入れてくれた。
ありがとう、甘神さん。
必ず君の笑顔を守ってみせるよ。
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