#010 転生者
「私の名前は
銀色で長髪の女性が僕に向かってそう訪ねてくる。
どうやらこの人は魔王のことを知っているようだ。
「魔王の知り合い?」
『知らん。ともかく俺に用があるようだから、さっさと変わったらどうだ?』
「表に出てきた途端、悪さとかしないよね……」
『それは相手次第だろうな』
確かに。
僕たちが相手側にに協力しなければ、甘神さんが危険になる可能性がある。
逆に甘神さんを守るために敵対しなければいけない場合もあるわけだ。
『どちらにしろ、貴様では小娘を守りきれないだろう?』
まったくもってその通りだ。
こうなれば僕が入れ替わりを拒否する理由はない。
『任せたよ、魔王……』
「俺を誰だと思っている、小僧」
俺と魔王の魂が入れ替わった。
「白凪君……また、雰囲気が……」
戸惑いを隠せない様子の甘神さんに魔王が説明する。
「まあ心配するな。確かに俺は小僧とは別人だが、小僧に何か危害を加えるつもりはない」
説明が雑すぎます魔王様……。
「それならよかった……」
ホッと胸を撫で下ろす甘神さん。
『いやそれでいいの!?』
「まあいい、本題に入るぞ女」
魔王が鶴見さんに話しかける。
「見ての通り、俺に敵対する意思はないと理解して貰おうか」
「……そのようだ」
鶴見さんが警戒した様子で応答する。
「しかし白凪優と”契約”は結んでいるのだろう?」
「気に食わないが、その通りだ」
心底嫌そうな顔をしながら答える魔王。
何度も言うけどごめんなさいね。
「この小娘を一生守り続けろという契約を、な」
「なるほど……」
魔王の言葉に納得した様子で頷く鶴見さん。
「それなら余程のことがない限り、契約は遂行できないでしょう」
「腹立たしいことに、な」
「よろしい、では次は白凪優君と話をさせてください」
チッ、勝手に話を進める気に食わん奴だな。
という魔王の心の声が聞こえた気もしなくはないが、入れ替えはスマートに行われた。
体の主導権を取り戻した僕が喋る。
「……代わりました」
「素晴らしい……魔王を相手に体の主導権を譲らないとは、大したものですね」
いやぁ、それほどでも。
「てか、僕の中に魔王がいるって知ってたんですね」
「それはこのダンジョンがかつて魔王の住む居城だったからだ」
「なるほど……って、ここは新入生でも立ち入れるような初級ダンジョンですよ!?」
RPGゲームで魔王城って言ったら、ほぼほぼラストダンジョンとかですよね!?
「それでも現在は危険性が低くなっているのと、なるべく学園に近い場所で管理したかったのが理由だ」
「それは魔王が人に取り憑くのを知っていたから、ですか?」
「その通りだ。我々は”そういった存在”がもたらす脅威から、人々を守るために動いている」
つまり魔王以外にも?
「”
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