#004 底辺配信者、美少女配信者とのコラボを盛り上げる。

 コラボ当日。

 僕たちは学園と併設する実習用の初級ダンジョンで配信を開始した。


 基本的に機材は学園側が用意してくれたスマホ一台だ。

 それも配信用に学園が改造した特別品である。


 配信に必要な機能がこれ一つに纏まった神アイテムだ。

 いざというときの防災用品として使うこともできる。


 数十年前、突如として世界中にダンジョンが出現してからあらゆる分野で飛躍的な成長、変化が起こった。


 このスマホもその一端である。

 今や世界中には某青狸のような便利グッズが満ち溢れている始末だ。


 まあ、操作が難しくて僕はあまりこれ使えてないんだけどね……。

 

 そんな僕の横でスラスラと操作して配信の準備を始める甘神さん。

 やっぱり甘神さんは凄いなぁ……。


「できたよ白凪君!」


 どうやら配信の準備が完了したようだ。

 甘神さんが微笑みを浮かべながら僕に手を差し伸べてくる。


「一緒に視聴者さんに挨拶しよう!」


 彼女の眩しい笑顔に反して、薄暗い愛想笑いしかできない僕。

 はたしてこんな僕に彼女と同じ画面に映る資格があるのか?

 

「ほ〜ら〜、早く早く!」

 

 甘神さんはそんな僕の手を無理やり掴んで画面に引き入れる。

  

 そんな彼女の楽しそうな雰囲気に当てられてか、さっきまで乗り気じゃなかった僕も何故だか自然と笑顔になってきた。


 甘神さんはそういう特別な力を持った存在なんだと思う。

 僕のような何の才能もない人間と違って……。


「やっほやっほ〜、今日も配信始めていくよ〜!」


 甘神さんが画面に向かって元気に挨拶する。


 それにしても、開始直後なのに凄い盛り上がりだ。

 最初から数百人の視聴者がいるなんて僕の配信じゃ考えられない。


 いつも0人か、たまに暴言コメントを吐かれる始末だ。

 それと比べて甘神さんの視聴者は民度も良い。


:やっほやっほ〜!

:柚葉ちゃん可愛い〜!

:今日も配信頑張ってね!


 という感じでポジティブなコメントばかりである。


「や、やっほ〜」


 しかし僕が画面に写ってからコメントの雰囲気が変わった。


:なんだぁ、テメェ?

:こいつ誰? 男? いや、女にも見えるか?

:俺たちの柚葉ちゃんに手を出すとか……おいおい、死んだわコイツ。

 

 その後も僕に対する辛辣なコメントばかりが続く。

 

 いざコメントを貰えてもこんなことが起きるのが配信というものだ。

 うわぁ、今すぐ配信者辞めたい。


「今日はなんとコラボ配信で〜す! 白凪優君! どう、男の子なのに可愛い顔してるでしょ?」


 そう言って甘神さんが僕の手を引っ張って無理矢理画面に引き入れる。


:そう言われてみれば……。

:男なのに華奢で女みたいな奴だな。

:いやこれただの百合に見せかけた純愛やん。


 少しだけコメント欄が平和になってきたように見える。

 しかし女の子っぽいと言われて若干傷つく僕だった。

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