#002 底辺配信者はイジメられる。
事の発端は数日前に遡る。
日本最大のダンジョン配信者の専門学校、
僕が通う学校の名前だ。
配信者の適性を認められた若者を育成する伝統ある学園である。
といっても、学内の雰囲気は普通の高校とそう変わらない。
勉学に励む者や青春を謳歌する者など、多様な学生が在籍している。
当然、こんなところでもイジメは存在するわけで……
「おい優、焼きそばパン買ってこいよ」
僕のようなド陰キャは格好のイジメの標的というわけである。
何一つ代わり映えのないいつも通りの日常。
人目につかない場所で複数人のガラの悪い男に囲まれていた。
「返事しろよ根暗野郎」
その中の一人がイラついた様子で僕の背中を蹴り飛ばす。
「……あはは」
地面に尻餅をつきながら、僕は笑って誤魔化した。
「何笑ってんだよ、キモ」
「まあまあ、何もそこまでやる必要ないじゃないか」
人当たりの良い笑顔で、男たちを宥める人物がいた。
イジメグループのリーダー、
正直、僕はこの人が一番苦手だ。
「彼も一応人間なんだ。言葉で説明すれば、きっと理解してくれるよ」
江蘭君は人間以下の家畜を見るような、心底馬鹿にした目で僕を睨む。
「僕はメロンパンでよろしく。勿論、お金は君の財布から出してね?」
「……分かったよ」
下を俯きながら震えた声で僕が返事を返す。
「声が小さくて何言ってるか分からねぇよ」
すると江蘭君が僕の前髪を鷲掴みにして顔を近づけてきた。
「返事は”はい”だ」
あまりにも苛立たしそうに言葉を吐き捨て、乱暴に僕の頭を投げ捨てる江蘭君。
壁にぶつかった額が擦りむけて少し血が出た。
しかしそんなことはお構いなしに、取り巻きが捲し立てる。
「さっさと行けよマヌケェ!」
この学園に入学してからこんな生活が毎日続いていた。
まあ、中学でもイジメられていた僕にはこんなの慣れっこだ。
これからも惨めな負け犬のような人生を送っていくだけである。
これ以上状況が悪化しなければそれで良いと思っていた。
僕に幸せになる権利なんてないのである。
しかし幸運というのは突然舞い込んでくるものだ。
「おい、お前ちょっと
いつものようにイジメられている最中、僕は江蘭君にそんなことを命令された。
クラスメイトの
男であれば誰もが憧れを抱くような完璧美少女だ。
美しいピンクベージュのツーサイドアップ。
整った顔立ちと、凹凸のくっきりした魅力的な肉体。
その美貌から新人ながらダンジョン配信者としての人気はトップクラスで、今年の新入生で一番のチャンネル登録者数と再生数を誇っている。
僕なんかとはまるで住んでいる次元が違う女神様のような存在だ。
そんな彼女に僕なんかが告白したって絶対失敗するに決まっている。
そう思って告白してみると、
「いいですよ」
なんと甘神さんは二つ返事でOKしてくれたのであった。
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