第13話
「こら、危険よ! そっちに行ってはダメ! 誰か止めて……!!」
彼の母親が必死に叫ぶ。
「はぁはぁ……」
目の前まで駆け寄ってきた彼は乱れた呼吸を整えている。そして、いつもの笑顔で言葉を紡ぐ。
「えーっと、久しぶり。その……ごめんね、ずっと会えなくて」
本当だよ、ずっと会いたかった。やっと会えた。でも私にはあなたに会う資格なんてない。こんなにも大勢の人に迷惑をかけて……
思っていることを口にできず私はただ俯いてしまった。
「大丈夫、もうどこにも行かないから。
もしかしたら君は不老不死なのかもしれない。僕だけ年を取って、老いて、君を置き去りにしちゃうのかもしれない。でも、それでもその時まではもう離れたりしないから。それに一緒にいられる方法を探すから。だから……」
そこで言葉を区切り、彼は後ろを振り返った。
「お父さん、お母さん、ごめんなさい。もう僕は帰りません。親不孝でごめんなさい。でも、必ず幸せになるから。だから、今までありがとうございました!!」
両親の方へ向けて深々と頭を下げた。
「何言ってるの! 戻ってきなさい!!」
母親が泣き叫んでいる。だが、それを宥めるようにする父親は何も言わずただ彼のことを見つめていた。それを見つめ返す彼の横顔を見ながら
「いいの?」
私は改めて問う。
「うん、言ったでしょ。もう離れたりしないって。君は呪われてなんていない。それを僕が一生かけて証明するから」
私に会いに来れなかった間、彼がどんなことをしていたのか。
もしかしたら、両親を必死に説得したり色々と頑張ってくれていたのかもしれない。
母親はそれでも受け入れられなかったのだろう。けれど、父親は彼の意思を尊重してくれたんだ。彼の必死の努力が実を結んで、こうやって私の隣に来てくれた。
「ありがとう、ありがとう……」
ずっと触れてみたかった彼の体をそっと抱き寄せる。
私なんかがこんな幸せを享受していいのか、不安に思う私に対して彼は
「あはは、眩しいや」
とおどけるように言う。
「もう……」
そんな彼の様子に思わず私も笑ってしまう。
「でも、うん。今日も綺麗だよ」
「ありがとう」
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