第12話

 身体的にも精神的にも疲弊していたため、泣き疲れた後はいつの間にか眠っていた。

 目が覚めた時には夜になっており、月の光のおかげもあってか心も元気になっていた。


「ごめんね、ありがとう」


 起き上がり、腰を下ろしていた枯れ草にせめてものお礼を述べる。

 少しばかり歩くと、走り抜けただけのところは枯れかけてはいるが、完全には朽ちていないのがわかった。


「まだ大丈夫だよね……?」


 一言呟き、枯れかけの木にそっと手を触れる。そして、手先に意識を集中する。

 温かな光を発しながら、枯れかけていた木は徐々に元気を取り戻した。


「ふぅ……」


 額の汗を拭う。可能な限りこれを繰り返して木々を蘇らせてあげたかった。

 しかし、私には動ける時間が夜しかない。その時間をこれ以上割く余裕はなかった。


「またあとで戻って来るから」


 そう告げて森を抜ける。

 しかし、抜けた先に見えた町並みは、昨夜の静寂とは打って変わって、明かりが灯っており喧騒に包まれていた。


「ど、どうして……」


「魔女だ! 魔女はこっちにいるぞ!!」


 その叫び声を皮切りに武装した男性達がこちらに勢いよく駆け寄ってきた。


「本当だ、本当に光ってやがる……」


「人間じゃねえ……」


「バケモンだ……」


 男達は、口々に何かを発していたが、そのどれもが私を恐れてのものだとわかった。


「気を付けろ。どうやったのかわからねえが、手ぶらで牢屋をあんな風に爆発するなんて人間には出来っこない。俺達だって木っ端微塵にされるかもしれねぇ」


 言われてハッとする。

 そうだ、私は牢屋を破壊したんだった。それが町のみんなに伝わって、こうやって警戒されて……

 私がここに来て居場所がわかるまでは、皆おちおち寝ていることも出来ないくらい恐怖に苛まれていたんだ。


 泣いて、寝て、月の光を浴びて。気持ちがスッキリしたと思っていたけれど。

 それはただ現実逃避していただけで。何も問題は解決なんてしてなかった。


 彼に会いたい。それだけだったのに、こんなにも大勢の人を巻き込んで迷惑をかけていた。

 その現実を突きつけられて思い知らされた。やっぱり私は外に出てはいけなかったんだ。


 身構えている男達をよそに、私はそのまま踵を返す。

すると


「待って……!!」


 懐かしい声がする。

 振り返ると、彼がすぐ目の前まで迫っていた。

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