第4話

 デート当日――。

 お嬢様なんだから偏見で遅れてくると思っていたけど、どうやらその認識は違ったようだ。

「こんなところに来てどこに行くのかしら?」

 二十分前だというのに彼女は待ち合わせ腕を抱えて待っていた。服装は清楚なイメージを崩さずに、青色のワイシャツに足まで隠す長いロングスカート。全体をシックにまとめつつ、普段ストレートに流している髪の毛を一本にまとめて肩から降ろしている。間違いなく普段の数段かわいい。

 私もできる限り気合を入れておしゃれやメイクをしてきたけど、全然敵わない……これが金と元々の素質の差か。

「お待たせしてすいません。雪那さんめっちゃ可愛いです」

「ええ、ありがとう。あなたも可愛いわよ」

 言われ慣れているか当然といったように私のこと。流しつつ褒めてくれる彼女。そういうところ好き。

「で、どこに行くの?」

「あっこっちです」

 小言を言われながらも食べログで美味しいと言われているおしゃれなお店に着き、奥の席を譲る。そりゃ私だってわきまえていますよ。


「で、何がおいしいのかしら?」

「普通のハンバーグですね。あっ、私が今回は出しますけど、あんまり高いものは期待しないでくださいね」

「別にいいわ。安くても美味しいものは美味しいし。それに私はジャンクフードとかも普通に食べるわ」

 一応アルバイトで稼いだお金は持ってきたけど、大丈夫そうだ。というかジャンクフード食べるんだ……意外と庶民派なのか?

「まあ、私もここに行ったことないので知らないですけどね」

「……あなた、私と出かけようと言っているのに行ったことないの? ネットの評判はいいかもしれないけど、そんなものをあてにしていないで、一度食べなさいよ」

 ド正論をぶちかまされて押し黙ってしまう。

 むう。確かにそうかもだけどさ。

「こういう風に友達と一緒にどれだけ美味しいかも分からないところに食べに行くのが醍醐味じゃないですか?」

「そう言うもの?」

「はい(たぶん)」

 

 そうしてお喋りをしているとハンバーグが出てくる。美味しそう。

 鉄板焼きでスタイルのハンバーグだ。表面だけ焼いているようで自分でレアやウェルダンを選べる感じらしい。つなぎも使っていないようで食べるととろける。ソースもご飯に合うし……うっま。

「美味しいわね……」

「そうですね。ってご飯を食べているとき、雪那さんもしゃべるんですか?」

「当たり前でしょ」

「だってしゃべってくれなかったし。マナーが悪い的な感じで」

「あれは私なりにお金とか地位を求めている奴らへの対処法よ。基本的に私のところに来るのは資金の支援やお父様の会社と懇意にしたいとものばかりなの。だからあんな耐えられないような空間を耐えきったら、聞いてあげようとしていたのよ」

 ……なるほど、そうだったのか。だけど試された側からするとたまったものじゃない。何度心が折れたことやら。

 ちなみに私はその対処法を破った奴です。はい。

 食後のコーヒーもしっかりと味わって外に出る。


「美味しかったわ。それにああやって分からないものを食べるというのはスリルもあって面白いわね」

「だったらよかったです」

「今回はあまり時間はとれなかったけど、そうね。これからはもう少し時間をとれるように調整するわ。またよろしくね」

「はい!」

 初デートはどうやら成功だったらしく、満面の笑みを浮かべながら彼女を見送り、私はグーグル先生に感謝した。

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