第3話
それからも何度か心が折れかけた私だったが、放課後のお茶会(といっいいのか?)を通い詰めた。
慣れというのは怖いもので、相手がもうそういうものだと諦めてしまえば、お互い向かい合いながら無言で紅茶を飲むのは苦ではなくなっていた。
それに私に失敗は許されないのだ。
過去の経験を生かして、前の告白相手と違ってたっぷり時間をかけることにした。というかこの女が失敗したら普通にヤバい。決してミスは許されないようなミッションなのだ。
そんな風に通い続けて一ヶ月。
「あなた、変わっているわね」
これが彼女との紅茶を飲んでいる時に出た第一声だった。
思わず「あんたに言われたくないわ!」と喉まで出かかった言葉を飲み込んで、なんとか平静さを保ちつつカップを持ち上げる。
「そうですか?」
「そうよ。普通こんな嫌な女と無言で向き合うよなところに何度も通うなんてことしないわ。根気強いんだか、アホなのか分からないわね」
お前、わざとやっていたんかい!
紅茶を持つ手がカタカタと震える。
今すぐにでも殴りそうになる衝動と怒号をなんとか理性で引き止める。平常心、大事。
「私はここに来るの好きですよ? 美味しい紅茶も頂けますし」
「そう。なら、今後は紅茶の料金を取るわ。結構高いのよ?」
「出していただいて本当にありがとうございます! 美味しく頂いていますけど、もしそうなるのなら、もう少し安いものお願いします!」
「冗談よ……」
急激な脅しをされて私は思いっきり感謝しながら頭を下げる。
やめてください。マジで。それだと私が通うのにさらに生活費を削らないといけなくなる。高級マンションに住んでいるのにひもじい生活をするような見栄マシマシの外面お嬢様になってしまう。
若干引いていた雪那だったけど、紅茶を置いて私と向き直る。
「だけどまあ、ここまで付き合ってくれたのに話を聞かないのはよくないわね。いいわ、目的を言いなさい。何が望みかしら?」
女王様すぎない? こいつ。
うわーってドン引く私だけど……でもこうやって耐えてきたから温情を頂いているのだ。彼女の機嫌を害することはしてはいけない。
一度深呼吸をして彼女に微笑みかける。
「では、私と出かけませんか?」
「は?」
雪那が意味分からないといったように驚愕な表情で固まっている。そんなおかしなこと言っているか?
「えっ目的ですよね? だったら二人で出かけたいです。紅茶のお礼もしたいですし」
「……まあ、あなたがそれでいいのなら……わかったわ。だけど休日は予定が詰まっているの。あまり時間は取れないからお茶しに行くぐらいね」
渋々といった感じで彼女は頷いてくれるけど、どうしよう。考えていたデートプランが思いっきり崩れた。
でもせっかくのチャンスだ。ここでやらない手はない。
「分かりました。では今度の休日に」
「ええ」
彼女とのお茶会が終わり次第、私はすぐさまグーグル先生に文字を打った。
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