第2話
「ご機嫌よう。
「ええ、黒川さんご機嫌よう」
テラス席に向かうと、明るい茶色の髪を腰まで伸ばした彼女――
そう、彼女が次のターゲット。
誰もが知っているであろう大企業の社長令嬢でしかも美少女。
ステータスだけ見ればなぜ落とそうとしないか疑問に思うかもしれないけど、彼女はめちゃくちゃ嫌な奴なのだ。
出会った頃、絶好の標的だと思って近づいた時に「あなた庶民? なんだか安物付けているわね」と言われてすぐに辞めた。庶民ですけどなにか?
正直そんな彼女のことを落とそうとは思っていなかったけど、しょうがない。
もう彼女しかいないのだ。
「私もご一緒してもいいですか?」
「ええ、いいわ」
私を見ず、紅茶を楽しんでいる彼女が目の前の席を手で促す。
促さられた私が席に着くと使用人と思われる綺麗な人が私に紅茶を注いでくれる。ってここ、学校なんだけど。
「ありがとうございます」
紅茶を入れてくれた使用人は一礼してそのまま下がる。主人の方は……私に対して無関心なので、カップを手に取る。あっ美味しい。
「白峰さんは」
「紅茶を飲んでいる最中に、話し相手の募集はしていないわ。少し待ちなさい」
「え? でも」
「聞こえなかったのかしら?」
「あっはい」
圧に負けて押し黙ってしまう。てかマジか、こいつ。目の前に人がいて黙ってろって言う奴いる?
今すぐにでもキレて帰りたくなるけど、今後のためだ……こいつの攻略ができない限り、私の高校生活は終わる。なんとか握りそうになった拳を降ろす。
たっぷりと時間をかけて飲む気でチビチビと紅茶をつついていた彼女だったが、スカートにしわができそうになるまで握っているとやっと紅茶が飲み終わり、雪那がカップをテーブルに置く。
「で、何の用かしら?」
「……いや、用ってわけじゃなくて。単純に白峰さんを見かけたから話そうと思っただけで」
「あらそうなの? では用件は終わったわね。もう紅茶も飲み終わったし帰るわ」
「は?」
嘘だろこいつ?
あんなに待たせておいて言葉も交わさずに帰ろうというのか? 性格が終わっている。
本当に帰宅の準備をし始めて雪那が席を立つ。
「カップはそちらに置いておいて。ああ、それと雪那でいいわ。苗字を言われるのはあまり好きではないの」
去り際にそう言い残し、私の目の前を去る。
これもうダメじゃない?
攻略しようと思った初日から私は躓いた……いやこんな女を落とさないといけないの?
無理じゃね?
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