第7話

 お家にいた時だった。

 これでよかったのだ……そんな風に私が雪那と離れたことを後悔していたり、倫理観的にいらないって言っちゃったけど今後の学校はどうしようと悩んで休日に机で頭を抱えていた私だったが……。

「まさか私の家までくるなんて想定外なんですけど」

「そう?」

 チャイムを押されて出ると雪那だったからそっと閉じようとしたのに……後ろに止まっているリムジンが数台あったので「これ切ったら大変なことなりそうだな」って思って家に上げた。圧がすごかった。


 今もピリピリとした雰囲気を纏いながら紅茶を飲む雪那。

 上げてしまったものはしょうがない。

 もうほんとのことを言うべきだ。貴方をを騙していたこととか。私の目的とかも全部。それが誠意というものだろう。

「まずはごめんなさい」

「そうね。あの時なんの説明もなしで出ていくんだもの。そうするのが正しいわね?」


「それもなんだけど……私、あなたのことを騙して」

「ああ、私に学費を出させようとしていたこと? もちろん知っていたし、なんならもう払っておいたわよ」

「は? え?」

「それにあなたが何人にも告白していたこともね。随分と気が多いようね、莉音は」

 一気に情報が入りすぎて頭がパニックになる。

 彼女はなんて言った? 私がお金のために告白しまくっていたのを知っていたし、学費も払ってくれた? だめだ、言葉が理解できない。


「どうして……どうしてですか⁉」

「あなたの経済事情は知っていたもの。後期の支払いが厳しいのでしょ?」

「なんで……そんな私なんかに」

 拳を握りながら俯く私に彼女はそっと近づいて抱きしめてくれる。

「あなたのこと気に入ったのよ。あれだけ私に付き合ってくれたのは初めてだったから。興味を持ったの」

「だって私、自分でも最低だとは思いますけど、お金のために金持ちの誰かを落としてやろうと思っていたんですよ?」

「ふふ。なら私は見事にやられたというだけよ」

 そう言いながらも抱きしめてくれる雪那。思わず私も抱きしめ返す。嘘みたいだ。


「本当はね、私に高価なものを買わせるような都合のいい女にしようとしていたなら、すぐにでも捨てようかと思ったのだけど……いい子なのはすぐに分かったし。それに私も会っていて楽しかったわ」

「そんなことって……」

「ふふ。それなのにもうおしまいなんて言うんだもの。こっちはいつそのことについて話すのかと待っていたというのにね」


 そんな都合のいいことがあるなんて……。

 未だに声をかけれない私だったけど、雪那に顔を向けさせられる。

「だからあんなおしまいなんて言われて頭が真っ白になってしまったわ。悲しかったし、改めてあなたのことを大切だと感じたわ」

 本当に愛おしそうに私の頬に手を当ててくる雪那。私もその手に縋りつつ微笑みかける。

 それはずるいよ……私だって雪那とは離れたくなかった。

 そんな言葉が出てきそうになる。


 落とすつもりが、どうやら落とされたのは私の方だ。

「それにお金のことは気にしないでいいわ。別に返して貰わなくてもいいけれど、それ以外では返して欲しいわね?」

「はい。私のにできることであればどんなことでも! 雪那さん、大好きです‼︎」


 こうして見事、嫌な女改め最高の女を私は落とすことに成功した。

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このクソ嫌なお嬢様を落とします @kminato11

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